葛倉・湯西 (三等三角点峰)
 
NO.363    .
   

△3等『葛倉』は、高層湿原田代山の南東、田代峠(田代山林道)の南、馬坂峠の真東に位置する尾根部ピーク部標高1731.8m地点に標石がある。 最終車両到達地点は田代峠から南に5キロ地点までの区間である。 △3等『葛倉』への明瞭な道は無い、直近の小径(踏跡)は田代山林道6.8KP付近から県境尾根への道であった、以前の地形図には破線が入れられていた。 この破線は田代山林道が出来る以前の旧栗山村湯西川から会津・湯の花への尾根を通る古道の一部である。 

△3等『湯西』は、田代山林道の5.8KP付近の1562m峰から東に派生する尾根があり、その尾根の中間部に標石が埋石されている。 この尾根も会津・湯の花への古道が通っていた尾根であり戦前からの古書に登場する。 また、田代山林道は、大正二年の旧版図にほぼ今のルートで登場している。 しかし、『葛倉』付近では・1714m峰手前から東の尾根を下っている。

今回、△3等『葛倉』『湯西』の2点の標石に歩いた。 田代山林道は例年10/1 〜 11/30まで通行可能であり、それ以外の通行は禁止されている。 田代山林道とは、田代山林道は正式には「田代山スパー林道」(スパー林道は全国23ルート)と言います。 法面、路面の舗装が毎年少しづつ整備しているようです。

   

三等三角点「葛倉」 標石 花崗岩 保護石 2個 ( 2010.11.06 ICタグなし )



【山行日】 2010年 11月 6日(土) 晴
【山 域】 
田代山周辺  
【所在地】 「葛倉」 日光市大字川俣字ムサタニ
       「湯西」 日光市大字湯西川字ミカワ

【地形図】 1/20万図日光  1/5万図 湯西川
       ・「葛倉」は、 こちら>>   ・「湯西」は、 こちら>>
【同伴者】  単独 (山部)




三等三角点「葛倉」峰を1417m峰下から見る



【 △3等葛倉を歩く・取り付き点 】
鬼怒川、黒部、土呂部を通りまた゜暗い田代山ゲートへ到着した。 ここでゲートが開くまで仮眠でもしようかと腹積もりでろくに寝ずひた走って来た。 ゲートは開いていた、そのまま林道に車を入れた、所々舗装され林道整備が進んでいるようである。 ゲートからキロポストが表示されている、5.6キロ付近で広くなっている所がある。 ここが尾根取付部である、ここでちょっと仮眠をし夜明けを待つ事に決め車を降りた。 寒い、途中の土呂部では外気温がマイナス1.5度と表示していたので寒いはずである。 車でうつらうつらしながらしばらく仮眠をとった。

外の騒がしさに目を覚まし窓を開けた、近くの尾根で押しつぶされたような"ギャー・グォー"と言うような獣の叫びが何度か聞こえた。 唸り声は別な尾根からも聞こえ嫌な予感を感じさせた。 深い三河沢越しに明神ヶ岳のシュリエットが見える、空が赤く染まり始めた。 明神ヶ岳の上に明かりが一灯見えるしばらく見ていると少し上に昇ったような気がする。 明けの明星(金星)である、しばらく見ていると朝焼けの赤の空の中に消えていった。 空の赤さが増々濃く強まる、夜明け前の清々しさに身が引き締まる。


   

                     明神ヶ岳の上に、 「明けの明星」


周囲も赤く染まり取付点である尾根端がはっきり見えた、道は笹に覆われ薮化している何年も刈り払いされていないのか。 最近の地形図では県境からの破線が途切れて無い部分があったが、最近は登山道として歩く人はいなくなってしまったのだろうか。 周囲はますます赤に染まり夜明けは近い、その光景をカメラに収めるべく車を動かした。 どこから太陽は顔を出すのか分からない、3キロぐらい走り明神ヶ岳の左肩から三河沢の上に黒々とした高原山が見える。 高原山頂の日の出に照準合わせた、鶏頂山と釈迦ヶ岳の双耳峰のように見える鞍部から太陽が昇るのが見える位置だ。


   

             高原山(鶏頂山と釈迦ヶ岳)前の五十里湖・湯西川に雲海と夜明け


赤焼け空の輝きがさらに増し真紅に染まった、雲海の深い谷、暗黒のシュリエットの山々、大地に光が届き始める新しい一日の始まり、今日の歩きにエネルギーをもたらしてくれる。 ( ・朝日と夕日を比較するのはどうかと思うが、私は神々しい朝日が大好きである。)


   

          斜面の笹薮を乗り切り、平坦になった所で一服、笹に雪が載っている


取付点を林道キロポスト表示では、 6.8から8.8キロの所に変える。 長い薮漕ぎルートか急斜面の薮漕ぎのどちらを取るかの選択であった。 川俣の『高山』へも林道からの直登ルートを選んだ、その時の薮漕ぎが可能ならここも問題ないと、斜面の薮漕ぎを選択した。
取付点は、・1714m峰直近のやや北東尾根でこの尾根が最短となる。

8.8キロポスト付近は壁もなく笹原に入れる、この地域の県有地の案内板があり一台の駐車スペースもある。 笹は初めはまだらな状で薄めの所を拾い歩く。 北斜面と尾根筋に達する道形があり尾根へは濃い笹が隠す、笹尾根を通すと大木が立ち塞ぐ、ガムシャラに笹を掻き分け進む。 疲れたら笹に埋もれ深呼吸し立ち上がり、喘ぎながらまた進む。 ・1714m峰手前で1684m峰尾根と合流する大海原のような笹原があり慎重に方向を確かめる。 蛇行し古道を求めたがその姿は見出せずに ・1714m峰ピークの大木に到着した。 劣化したビニルが結び目だけが付いていた。 こんな物でも見ただけで勇気が出るのは私が単純な人間だからだろうか。


   

      
△1298.7『湯西』 ・ △1731.8『葛倉』 左上の古道の尾根を歩く  大正二年四月


1714m峰からは一部樹林がありその下は笹が薄くオアシスだと思う、笹に隠れた倒木に脛をぶつけ何ヶ所かアザをつけた。 大木が尾根に横たわり何本か乗り越えたが苔に足を滑らせてヒヤリとした。 目指すピーク峰が目前に迫ると俄然ファイトが沸き一気に笹原を上った。 一面の濃い笹に埋まった頂上は海原のようだ。 先には樹林があり根元は笹のないオアシスにザックを下ろす。 『葛倉』標石の探索に一番高そうなコブの上に立つが足に感じるのは笹塊だ、約30mの笹尾根を何度も行ったり来たりした。 腰丈の笹の中に顔を埋めて丹念に探す、標頭を見つけ時には安堵の快感にヤッターと胸の中で叫んだ。 何回か現地に行きながら標石が見つけられずに戻った事もあるその時の失意は大きい。

標石周囲の笹を刈り取るとポッカリ空いた空間は隣の笹コブに乗り見ると笹原は風に揺れ渦潮に見えた。 ゆっくりと時が流れる

標石の記録、清掃をし現地を後にした。 歩いたルートを確実に戻って出発点に戻った。 出発して30分が過ぎた頃に途中の東尾根で道形が二ヶ所あった、後に旧版図(大正二年・陸地測量部)を確認したところ、この道は当時の古道の道筋と同じと分かった。 この尾根を登ったことはあながち間違いではなかったようだった。 





△3等『葛倉』のあるピーク、笹原中央に三角点が埋石されている。




 
【 △3等 『湯西』 を歩く 】

湯西の名の付く『湯西』三等三角点、この湯西川地区の名を冠した三角点には大きな期待を持っていた。 田代山林道がなかったら湯西川奥の三河沢から尾根を登らなくてはならない。 明治の測量人たちは何度も尾根を行き来したのだろう。 この尾根には古道があったと言う、湯西川から会津湯の花への道だ。(近くには枯木峠越えの古道もある。) 


    

                       △三等『湯西』標石

 

△三等『湯西』標石は・1562m峰と三河沢ダムを結ぶ尾根の中ほどにある、三河沢ダムへの道路から標石まで約450mの高度さであるから下からでも良いのであるが、△『葛倉』標石確認後なので、田代山林道から歩く事にした。 林道のP5.0キロポスト付近の擁護壁の無いところから・1562m峰の南尾根に取り付く、『湯西』標石へは一旦・1562m峰へ登りピーク手前から東尾根を下ることになる。 東尾根をひたすら下り標石へそして帰りは上りとなる、これを"行きはよいよい帰りはこわい"という。 地形図では平坦な尾根も実際には岩があったり、くぼ地がある、一本尾根で間違うこともなく単調だが、初冬のたたずまいの木々は葉が落ち周囲の景色が飽きさせなかった。


     

                    △3等『湯西』のやさしい尾根



『湯西』標石付近に着いたが見当たらない、15分程探したようやく折れた枝の下に隠れていた。 周囲を片付け清掃した。 何の変哲も無い小広い尾根に明治の埋石以来静かにその役目を務めこれからもその任務を全うするだろう。 戻りは思っていたより簡単にもと来た所を戻った、一部獣道があったが落ち葉に隠れているのか途切れていた。 田代山林道はこの時期になると紅葉も終わりツーリングのバイクも少なくなり車に戻ってからは1グループのみであった。 そのグループは馬坂峠へ行きたかったらしかったが、迷い込んできたとのことだった。

   

                  尾根の倒木に付くサルノコシカケ



 
【所要時間・歩行距離】
田代山林道(P8.8) 7:00  -  ・1714m峰 8:00 -  △三等『葛倉』 1731.8m峰 9:00-10:30  -  林道(8.8P) 取付点へ戻る 11:20  = = = = =  ・1714m峰南尾根下(P5.0) 11:55 -  △三等『湯西』 1731.8m峰 12:15-13:35 -  林道(P5.0)取付点へ戻る 14:30

所要時間 約 6時間 55分  ( 『葛倉』 約 4時間 20分 ・ 『湯西』 約 2時間 35分 )
 * 三角点標石の、清掃作業などの時間も含む

この三角点への道はありません、ご自身の責任で行動してください。


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