県境尾根・枯木山周辺記 NO.700-1
日本の中央分水嶺が通る福島栃木県境で歩く。ピークだけを目指せば他のルートも考えられるが、中央分水嶺の尾根を無雪期に歩くことに意義を感じて挑戦した。今回は手前にて敗退した形に。

遥かなる無雪期の枯木山は奥の雲の下のピーク

     【山行日】 2005年10月29日/30日
     【山 域】 県境尾根(栗山・南会津)
     【地 図】 国土地理院 1/2.5万図 湯西川
            地図(田代山峠と1663.3m三角点峰)
            (県境尾根と枯木山) 地図(安が森峠周辺) 
     【天 候】 10/29 曇りガス、夕刻雨 夜間強風
           10/30 朝はガス、その後晴れ間見る
     【所在地】 福島県舘岩村 栃木県栗山村
     【同行者】 烏ヶ森の住人さん、ノラさん、山部の3人
     【参考HP】 烏ヶ森の住人さんHPの報告はこちら


【タイム】

10/29 自宅(5:10)=烏ヶ森さん合流(5:20)=壬生=鹿沼IC(東北道・日光宇都宮道・霧降有料道)=栗山・土呂部==湯西川分岐(7:10)==田代山峠(7:30-7:55)−−1670m峰(8:30)−−1663.3m三角点峰(8:50-9:00)−−1620m峰・沼(9:30)−−1660m・幕営(12:15-45)−−1706m(13:50)−−1650m峰・撤退点(14:30-40)−−1600m(15:30)−−1660m・幕営地(16:40-

10/30 幕営地 -7:25)−−1620m峰・沼(9:25-35)−−1663.3m三角点峰(10:15-35)−田代山峠(11:15-45)
土呂部今市=自宅(15:30)

田代山林道の県境峠(田代山峠)

峠から紅葉の先に明神ヶ岳と奥に高原山

集落から遠い山へ
 今回の3人で歩くのは2回目になる。それなりに薮を歩き続けてきたので枯木山はまあそれなりに何とかなるだろうと勇躍峠から東尾根に取り付いた。地図の!記号がある尾根で栃木側が急激に落ちている。尾根の縁に沿ってクマイ笹の背の低い所を選び歩く。薄い踏み跡があった『シメタ』この踏み跡は見る限り続いているように思える。何度も片足を踏み外して栃木側に落ちれど笹をつかみ復帰する。最初のピークを過ぎると一旦鞍部に下る。鞍部の笹は人の背丈を越す程になっている。鞍部を通過して再び稜線に沿って登る。福島側は緑の笹と白いダケカンバ印象的で新道沢に下っている。

 遠めにはミヤコザサの快適に見える稜線も足を踏み入れると深いクマイ笹である。しかしミヤコザサ同様に茎は細く特に問題とはならないが密生しているので足元は見えない。稜線を上りきると最初の明瞭なピークである、三角点標石のある1663.3m峰に着く。ここも一面の笹原で大きな木はない、栃木側は切れ落ちているので眺望はすばらしい。日光連山が見え今日の登山口となった田代峠の尾根の上に白根山の頭も見える。田代山のなだらかな台地と笹原が大きくある。何と言っても今日のハイライトは紅葉である。栃木側の湯西川への色づいた尾根は圧巻である。雲っているのは残念であるが深い山奥の紅葉は格別である。三角点標石の周りの笹を刈り払うと四個の石がしっかりとガードしていた。ここからさらに奥へと笹の原を下って東の県境尾根へ。

田代峠を見る (撮影 1670峰)

1663.3m三角点峰 (撮影 1670峰)

印象に残った1620m峰
 標石から先は踏み跡はない。ルート上には沢山の小ピークがあるが三角点峰の次の1620m峰はとても印象に残っている。三角点峰から小ピークを越えて1620m峰までは笹もクマイ笹で変わりはないし問題はない。1620m峰を下り始めると尾根が二つに割れた福島側の方がやや笹が浅いと思い下る、すると下方に平たい草地が見えた。いやな予感がする案の定ぬかるんでいる、帰りここの渕で30cmも靴がめり込んだ。この底なし沼からの流れだしの窪が道のようになっている所をくだる。少し下った所から方向をやや南東に変えて尾根をくだる、クマイ笹にチシマザサと雑木が混じりいよいよ薮の本番を迎えた。

 深い手強い薮は南(栃木)側が濃い、下りは濃くても何とかなるので心配はしていないが。南東の尾根の途中から今度は東へ尾根を乗り換える。夏の間元気に育った笹はいやな感じより清々しく思える。粛々と県境尾根を進む、やはり雪のない時に来て良かった直接土(笹)に足を着ける実感が快い。笹原からヤセ尾根に痩せた所は全て会津側を巻きながら歩く。獣道も無いまっさらの尾根には先人の赤布はあるが当てにするほどはない。深い笹海を漕ぐと笹の帯が見える、見た目は歩き易そうであるが又しても胸高の笹のスカイラインだ。

尾根の木々は清々しい

底なし沼のような湿地の横を通過する

笹と潅木を分けてピークを越えて行く

1660mが見える

幕営のピークへ
 県境尾根から栃木側への支尾根の明瞭なのは、田代山林道の尾根と三河沢とアサズマ沢の間の尾根として枯木山先の1692m峰から湯西川集落への尾根である。深い三河沢に削られた尾根は紅葉に彩られている。三河沢には大型ダムがあると聞いているがそれらしきものは見えない、砂防ダムのようなものと林道は確認できる。県境尾根が大きく屈曲する1660m峰のピークが見えてきた。また枯木山の尾根も正面に見えてきた。この辺で前線接近を予感させる黒雲が流れ来る、やがて小雨が落ちてきた。雨具を点検して進む笹が雨を受けてより青く見える。

 1660m峰は変形のブーメラン形でやや旺盛な笹と大きな針葉樹のあるピークである。ブーメランの一辺は三河沢とアサズマ沢へ向って笹原は伸びる、杭が有ったとしても深い密笹で見出せないだろう。ブーメランの外周の曲がりで県境も南東から北東へと90度方向を変える。笹原を北東へ10m程下ると針葉樹の先に枯木山の尾根が横に広がっている。慌てることはない泊まりに備えて天候が気になるので早めに幕営地を定めた方がよい。今までの尾根のでは良い場所は無かった、この先の尾根も痩せて見えるガスが鞍部を横切って流れている。1660m峰のこの辺はやや傾斜になっているが強風に強いまあまあの場所だ、3人の考えは一致した。

 テントは2〜3人用なのでちょっと狭いので、ツエルトにザックは収納することにした。まず笹を鎌と鋸で刈り払い笹を下に敷いてテント入口の上にフライを張った。これで遅く戻って雨になっていても寝る事はできそうである。重い装備は残して空身で出発だ。これからどれだけ県境尾根を伸ばせるだろうか。

ガス消えた国境尾根を行く

手の届く所に、枯木山の尾根

この先で撤退を決意
 1660m峰から尾根は急降下、上から見た目はここもミヤコザサしかし腰から背丈の密笹と潅木、下りだから問題はない。山部が下り始めるとどうも尾根を外している、このままでは谷越えになってしまう、後ろのノラさんから左が尾根筋である旨の声が掛かる。すでに下り始めた山部と烏ヶ森さんは横に30m移動しようやく尾根に乗って事なきを得た。急な尾根を一旦下って登り返すと1600m地点である、笹のラインは長く1706m峰へと延びている。振り返ると黒い1660m峰が急峻に聳えている。

 見た目はスカイラインだが笹の深さは腰から胸丈である、1706m峰までは体力勝負であり空身だと楽である。1706m峰を越えるとシャクナゲ藪になっている、枝を避けながら通過し登り返すと次のこぶ(1650m)に到達した。いよいよ県境尾根が枯木山の尾根に接するパノラマが広がっている。ここで皆の足が止まった、前線の通過に伴って風が強くなってきた。会津の山々は黒い雲に姿を隠しつつある、ガスが急速に近づいてくる、日光連山も消えた。

 時間の計算だ『現在時刻は14時30分で、片道1時間半と計算すると、ここに戻れるのは夕刻の5時半さらに幕営地まで2時間プラスすると夜7時半になる』となる。幕営地からここまで2時間は思ったより掛かった、田代山峠からでは6時間半であるこれでは枯木山へは無理である。今日はここまでと考えは一致し、清く撤退を決意する。楽しみは次に残そうと思いつつも田代山峠から安ヶ森峠は長いなー。それからはテントへ向ってピッチを上げて戻った、途中の鞍部は冷たいガスが早く流れ冬の近いことが伺えた。1660m峰の最後の上りは雑木の混じる急勾配で夕闇が迫っていた。

1660m峰・このピークが幕営地

ぎゅうぎゅうのテント泊

テント泊下山
 荷はツエルトに入れてテントの中は3人のシュラフでいっぱいだ、2、3人用は快適なのは2人だなでもツエルトにはない空間だ。平らなはずだがシュラフカバーが滑ってづり落ちる何度か寝返りをした。こんなに早く寝たのはいつか思い出せないくらい早い、深夜一度起きたが日頃の寝不足が解消になった。

 2日目の下山時はガスに覆われて視界はない、歩くにつれてガスは晴れてきた。下山には後ろ髪を引かれる思いもあるが、山々の紅葉が気持ちを和らげてくれ往路をたどった。途中の峰から田代山峠の林道を走ってくる自動車の列が見えた。青空が広がって久しぶりの県境尾根歩きを楽しんだ。同行のノラさん、烏ヶ森の住人さんとの3人コンビでまた歩きましょう、ありがとうございました。

グリーンベルトの密笹とはこんな状況の連続です。

深笹の中を歩く
* 通称 : 田代山林道は、一般県道栗山舘岩線です。今年の供用期間は11月20日/7:00-17:00です。一部舗装されていますがダートの路面は整備されている道です。

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