「聖 号」二等水準線路 (会津只見川に沿って)   .
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只見川に沿って沼田街道が通り、聖号水準測量された。       


【二等水準点 聖号水準路線とその周辺】
   『水準測量実簿第八八部 二等水準點々之記』によると会津坂下町から只見町への旧沼田街道(只見川)沿いに明治41年度に陸軍陸地測量部において水準測量を施行した。

 只見川に沿った沼田街道は尾瀬を抜け桧枝岐村で会津に入る。 桧枝岐からは伊南川に沿って只見へ下る。 只見川に沿って街道は進むと会津信仰の中心地柳津を通って会津坂下(あいづばんげ)付近で越後街道へと続く道である。 標高800m前後の山々の間を縫うように只見川が蛇行する、平野部を蛇行するのとは違う、急峻な山を迂回するように岩をけ削りながら流れる。 街道は只見川の縁や峠を越える道筋である。

 日本の本格的な正確な地図作りのため明治期の三角点測量が始められ三角点の標高を確定するための水準測量である。 二等水準点はそのためのもので会津の山々の標高を聖号水準路線の標杭や標石から確定させるものである。 点の記には、『最初標杭ナリシガ仝年九月班長ノ訓示に基づき標石ニ改埋ス』とある。 点の記を開くと偶数号に埋石した。 (* 班長は玉井要人である。=映画「剣岳・点の記」では小沢征悦が演じた)


 聖 号水準点線路の標石の所在地
自 福島縣岩代国河沼郡坂本村・第一号
径 福島縣岩代国大沼郡西川村大字宮下
至 福島縣南会津郡伊北村・第三四号
明治四十一年度埋標 埋標者
 仝 年 度 観測 観測者
陸地測量手 倉持壽吉

標石番号「地形図」        設 置 場 所  現 況   探索状況
聖 2 号「野沢」 福島県河沼郡坂本村大字細八字家の下  亡失中
聖 4 号「野沢」 福島県河沼郡柳津村大字柳津字阿久津 亡失
聖 6 号「宮下」 福島県河沼郡倉戸村大字郷戸字栃窪 亡失
聖 8 号「宮下」 福島県大沼郡原谷村大字檜原字居平 亡失中 * 可能性あり
聖10号「宮下」 福島県大沼郡宮下村大字宮下字水尻 亡失中
聖12号「宮下」 福島県大沼郡西方村大字早戸字下ノ原 亡失中
聖14号「宮下」 福島県大沼郡西方村大字早戸字小津巻 亡失中
聖16号「宮下」 福島県大沼郡沼沢村大字水沼字沢東 亡失中
聖18号「宮下」 福島県大沼郡沼沢村大字中川字上居平 亡失中
聖20号「宮下」 福島県大沼郡川口村大字西谷字潜木 亡失中
聖22号「只見」 福島県大沼郡横田村大字越川字深田 亡失中
聖24号「只見」 福島県大沼郡横田村大字越川字一野々 亡失中
聖26号「只見」 福島県大沼郡横田村大字横田字濱子 亡失中
聖28号「只見」 福島県大沼郡大滝村大字滝沢字上原 亡失中
聖30号「只見」 福島県南会津郡伊北村大字塩沢字上滝 亡失中 * 可能性あり
聖32号「只見」 福島県南会津郡伊北村大字塩沢字深沢 亡失中
聖34号「只見」 福島県南会津郡伊北村大字蒲生字八木沢 亡失中

* 設置場所は、当時の旧町村名でそのまま記載しています。   * 「  」は1/5万地形図の図名です。
* 『聖8号』〜『聖34号』の14点は、昭和27年度に再観測(測量官鈴木武治外六名)されていました。

   ( 2010.8.21 調査)


二等水準点標石

頭部に半球部はない






 写真は『徳一七號』



                       二等水準点について

・明治期の陸地測量部設置の二等水準点は、「測量官の冠字に一連番号で表す」とある。
同じ測量官が担当すれば他所で同一の番号の水準点が存在するということのようです。
水準点番号の欠番ですが、たとえば「徳2〜7」ですが、これらの水準点は全く存在しないということではなく、水準点が標石ではなく標杭(おそらく木杭)であるようです。 (標石グループ 上西氏談)

・明治の三等三角点設置時の三角網図には二等水準路線が記載されているのを見たことがあります。設置目的から、以外と幹線からはずれた村々や峠を通過しているようです。標石が設置された路線はほとんど無く、だいたいが木杭の水準点のようです。かなり以前ですが埼玉県内の陸地測量部の二等水準点の点の記を閲覧したことがありました。それによると、路線のすべてが標石ではなく「木杭」と記載されていました。ちなみに埼玉県内を通過する陸測の二等水準路線で標石の設置されたものはひとつもありません。 (標石グループ 飯島氏談)

・水準測量(水準点)は、三角点の標高を特定するために木杭や標石を設置しその基準点(水準点)から周囲の三角点の標高を得るのであるが、特筆すべきは徳号水準測量路線には三角点標石そのものを路線に組み入れ直に標高を測量していった三角点がある。 三等三角点『平五郎山』は、水準路線が三角点を通過しているもので水準点を兼ねている珍しい三角点でもある。
・全国的に見ても明治の二等水準線路で標石が確認されているものは少ないようです。 現在さらに調査を進めいますが、『徳号』標石以外では、つくば市国土地理院・地図と測量の科学館に展示中の二等水準点標石
『福24号』(当時の設置場所・群馬県利根郡川場村川場)がある。 また、『福11』『福20』『念3』の3点を2010年度に探索し現地確認した。

・徳号水準点標石探索は、標石グループの山岡氏、上西氏、飯島氏、遠山氏の情報・資料を元に探索したものです。 特に、徳号水準路線記載の「下野國、岩代國、所在三角及水準點圖」及び徳24号の「点の記」など貴重な資料を上西氏、飯島氏からのご提供いただきました。 (標石グループ 山部)
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