前黒山 1678.3m    NO.219
この冬の本格的な雪の中を歩く、頂上は−12゜Cであったが吹雪で体感温度はそれ以上
登頂リストへ  表紙へ     山部薮人 03.12.21記
【山行日】     2003年 12月20日(
【地  図】     1/25000図 塩原
【所在地】     塩原町
【天  候】     大雪(粉雪) 強風 気温・山頂−12゜C、日塩道路−8゜C、東北道−1.5゜C
【同行者】     NAさん、RKAさん

【コースタイム】
自宅出発(6:00)==JR栃木駅(6:20)==西那須野IC(6:50)==関谷コンビニ・合流(7:05)==日塩料金所(8:05)==日塩道路上に駐車・前黒山治山材料運搬路入り口・出発(8:10)−−運搬路・分岐(9:15)−−運搬路・車止め(9:35)−−大岩の薙ぎ黄色の看板(10:05)−−壊れた木橋(10:18)−−NO.2の薙ぎ・ここを上がる(10:50)−−尾根上(11:30)−−前黒山山頂(11:54-12:20)−−尾根上(12:35)−−NO.2の薙ぎ・下(12:45)−−壊れた木橋(13:00)−−大岩の薙ぎ(13:07)−−NO.1の薙ぎの先大岩の有る林道(13:16)−−日塩道路上の前黒山治山材料運搬路入り口・帰着(14:25)==西那須野IC==(東北高速道)==栃木IC==JR小山駅(17:50)==自宅帰着(18:10
)    
 今日の歩行時間 約6時間15分

山名板

薙ぎを上がる・NAさん,TOさん

【NAさんとRKAさんと三人で吹雪の前黒山】
今日は先週に続いてRKAさんとNAさんとで、道の無い山前黒山だ。尾頭の尾根近くの山歩きである。栃木の山を歩き始めて塩原周辺に集中しているのが多くなった。またまた先週に続いて塩原にやって来た。前黒山は「高原山探訪」のYoshiさんが最近歩かれページに山行記録が掲載されました。これに塩原に集中している山部隊が触発され「高原山探訪」を参考に歩く事になった。

また今回は日光の宿堂坊山、三俣山、錫ヶ岳をこなす栃木の山を相当数歩かれているベテランの茨城のNAさんが加わっていただいた。山部は初対面であった関谷のコンビニで挨拶となったが以前からの友人のような気がした。そんな紳士的な方で今日の絆は万全と思った。NAさんを紹介していただいたRKAさんは毎週2日は歩いている方で、その行動力はどこに有るのだろうと思わせる、気配りと調整のうまさを持ったスーパー女性クライマーです。今日はこのスーパー山部隊が完全冬バージョンになった前黒山に向った。
 関連ページ  若見山、新湯富士03.12.14
 参考文献   「高原山探訪」は山部薮人HPのリンクにあります

膝まで潜る笹の荒れの道 吹き付ける雪と風とで足跡を消す    03.12.20
【冬山の安全について】
前日から大雪警報が全国的に出され関東北部も含まれている。冬山の安全で考えているのは、刻々変わる状況の変化を的確につかみ判断し行動することであると山部は考えている。考えていた場所より早く降雪(矢板の高速上で)を見て今日は予定より早いななと気を引き締める。今まで冬山で吹雪の中を歩いたが精神的にパニックにならなければ問題なしと思う。一番重要なのはしっかりとルートを探し出し間違いそれが重なってしまう事がないようにする事だ。思っていたより積雪、降雪で環境が急激に変化する場合の状況判断であろう。今日の最重要なのは最後のアタックルートである、薙ぎを間違いなく確定できるかと、その薙ぎの積雪がどのくらいあり新雪雪崩などの問題だけと思う。
【前黒山入山点】
降りしきる雪の中関谷で合流して日塩道路(もみじライン)の料金所前のトイレのある駐車場に1台の車をデポする。料金所のゲートを潜り除雪された道をハンターマウンテンのスキー場に向うスキーヤーの車と走る。山部車は今年雪道とアイスバーンは経験しているので問題なし。程なくして前黒山治山材料運搬路のプレートのある林道入り口がある。ここの入り口の前にもいくつかの林道が前黒山の緩やかな山腹に走っている。除雪車のどけた雪が路肩に溜まり林道には入れない。今日の状況からして林道に乗り入れたら戻れなくなる可能性がある。こんな所で無理に車で乗り入れるリスクは必要ない。1時間でも,2時間でも歩けばよいのである。
【ルート】
前黒山へのルートは箒川の支流の鎌研沢と空沢が明神岳と前黒岳の裾野を分けるように谷を作っている。その空沢を右に感じながら林道を歩けばよく初めてあるく道は新鮮でよい。真っ白くさらさらの粉雪の積もった林道を歩き出す。林道には積雪30cmがあり、ラッセルなどと言えない位だが雪を蹴散らしながらの歩きとなる。最初の分岐に壊れかけた小屋があったが無視してそのまま歩き続ける。三角点1169.8の先の分岐があり檜の植林地が降りしきる雪をかぶって広がっている。やがて林道が集積場を思わせる広場に出てそのまま沢に下りてスキー場に向う道をここで分ける。その道を進んで下の砂防ダムの先に道を見てきた。分岐の広場で最初の一服をする、立ち止まるだけの一服であった。その先の道はそのまま夏ならば車で楽に走ってこられるだろうなどと考えながら歩くと車はここまでの道に木が置かれた車乗り入れ終点に到着する。ここまで何ヶ所か赤のビニルテープを見たが横殴りの風雪で木々に雪がついて見えないこのがあったと思う。ここで一服する、RKAさんから煎餅と干し柿を頂き食べる。

無雪時に車が入れるのはここまで

壊れた橋の下の沢を越える
ここから林道はクマイザサがある道になるが、雪で笹以外はあまり見えない。林道にはつるが垂れ下がり大きく揺れている。道の壁面が崩れて路床が無い所もあり、雪が積もり慎重に通過する。そこを越すと道が消える、どうなっているかよく見ると木の橋が壊れて先がないのである。地図など見ながら適当に歩いていると、雪が積もってスパッと道がないので注意が必要だ。ここは一旦沢に下りて渡る大石がごろごろしているらしく雪で足をどこに着くか不安定だ。そこからまた雪を蹴散しながら笹の道を歩く、この辺では笹の上に雪が積もって笹が少なく感じられるが高度が上がると雪が多くなる。膝だった雪が膝上まで来るようになった。途中から先頭を交代してNAさんが終始先頭でラッセルでむしろ先頭が早く間が開くほどである力強いNAさんである。

丸い大石のある薙ぎはパスして横断する、小さい崩れもパスする。地図と「高原山探訪」にある薙ぎらしい雪渓に到着する。倒木らしい木の根か枝に二重のビニルテープがある。何かを語りかけているようである。雪は60cmの積雪で傾斜があり雪は1m位に思われる。まずテープのある薙ぎの端で新雪雪崩の危険はないかの判断をするが、そこまでは積雪は無いと見る。ここで山部が声を上げて「高原山探訪」の10:04の項を読む、三人でここに取り付いて上に上がる事を確認する。雪が締まっていないので足場が中々固定できない、バランスと腿上げの筋力が要求される。NAさんはまたも上方に急斜面をラッセルしながら登っていってしまった。薙ぎ上部からコメツガと笹原に笹と木の枝につかまり上がる。RKAさんも自力で50Lのザックを背負って上がる、懸垂とバランスがすごい。そこから雪のかぶった笹とコメツガ、ダケカンバの林を上り尾根に出る。薙ぎの上部と尾根のビニルのマークを見つけた時はうれしかった。マークは雪で見えないものが多分あったと思うが邪魔にならないくらいだ。

尾根は気温が歩き出しが−8゜Cであったが、尾根では−12゜Cだそれに強風が吹きつけて体感温度はさすがに低そうである。木々には霧氷が着きコメツガの葉には雪が付いて重さで下がりモンスター完成間近いである。尾根を高みに向って歩くテープがまめに確認できる。先頭のNAさんがカモシカが今前を走り去ったと言った。NAさんのラッセル跡と別の跡があったのでそれのようだ踏み跡の雪が埋もれるそうなので、頂上に向う尾根のみ赤布を付けた。コメツガの横を抜けると笹原の先にポールの上にビール樽のあるのが見える。すでにNAさんは頂上に着いた。続いて全員頂上に立つ。
一時見えた明神岳のシュリエット
山頂付近の笹原膝上の積雪中を歩く
【前黒山山頂】
今日の主役は吹雪であろうか山頂部は遮るものはない吹き抜ける風の通り道でこの上で加速するのではないかと思うくらいだ。一時青空が出るのかと思われた視界も今は無く、明神岳はもちろんスッカン沢の先の大入道はじめ高原山の峰々は吹雪の中でシュリエットもない。山頂はL鋼に小さな山名板が一つあり、トップにビールの小樽に前黒山の文字が書かれて印象的だ。三角点の標石は雪に埋もれそれらしき所を掘ったが見つけられなかった。Yoshiさんののこぎりは見当もつかないあまりにも寒く一時モンスターの陰に隠れ休むことにする。カメラも雪が着きバッテリーは動作しているが、動作間隔が長く思える。モンスター(コメツガの大木)の中に入ると周りの葉に雪が着きそれがガードして風は防げたが温度計は12.5゜Cを指す山頂のポールの所とは体感温度が全然違う。今年初めての温度と思う深々ととした寒さと違い音もあるので長居はしたくない。霧氷の着いた写真を撮りたい所もあるが、山頂をわずかな時間で下りることにする。
【下山】
頂上からは来たルートをたどってもどる。薙ぎの状態も安定しているようでコメツガ林の笹原を下る事も考えたが薙ぎを間隔を開けて下った。積雪はまた増えている。これからはこの冬はこの薙ぎを上がるのは危険であろう、この冬のラストであると思う、あと少し降ると薙ぎの通過も慎重にしなければならないだろう。薙ぎの下部に全員無事到着する。今の状況では明神岳へのルートを考える必要はない。時間を考えると帰り道もゆっくりするわけにもいかない。慎重にもと来た林道を戻る。壊れた木橋の沢の通過も慎重に沢に降り問題なかった。途中スパッツを直しで一服する。山部もスパッツの裾が開き靴の中にも雪が入るが気温が低く解けないで居てくれるのでスパッツのジッパーを閉じたでけで済ませた。林道は当然下りでペースが上がるかと思ったが、雪がその後積もり上がって来た時の足跡は消えている。雪の抵抗がラッセルの付加をかける。3つの分岐を過ぎ、日塩道路を走る車が下方の見えるとさすがに達成感がする。山は数でない事が最近実感解かってきた山部であった。大きな看板とゲートが目に入る、車に目をやると雪が20cmくらい積もりエンジンを掛けてもしばらく温度は上がらずしばらく風を避けシートで余韻を味わっていた。RKAさんがドリンクを出してくれホット安堵の気持ちになった。吹雪でスキー場からの帰る車が下りて来るので、ここでターンをせずにハンターマウンテンの入り口まで行ってUターンして帰路についた。
薙ぎから尾根にコメツガの林を上がる
【今日を省みて】
終始安全を意識して三人の力を合わせて、技術も、判断も的確に出来て満足いく歩きが出来ました。最悪天候に試練を与えられましたが、冬山を存分に満喫させてくれた前黒山に感謝である。
本日の山行に当って参考にさせていただいた、「高原山探訪」の正確な内容に感謝したい。帰り道スリップ事故が各所で発生していた。高速上でも前車がスピンして止まったり、雪は山も里も慎重が一番である。