高薙山(たかなぎさん) 2180.7m  NO.249-2
遥かなる行者の尾根のまだ先に 雪を擁いて薙ぎの爪跡
【山行日】 2005年 4月 23日(土)
【山 域・目 的】 高薙山の山頂、2193峰から温泉ヶ岳へは(断念)
【地 図】 1/2.5万図  川俣温泉、男体山  地図(高薙山)  地図(2193峰) 
【天 候】 小雪時々晴れ間、終日強風低温(-5〜-10℃?)、下界は快晴暑かったらしい。 
【所在地】 栗山村、日光市 
【同行者】 氏山さん、隣町のHさん途中までご一緒 登頂リスト 2005年へ  トップページ 
                          04.04.03の高薙山はこちらです。
山行タイム 湯元(5:45)−−小峠(6:48)−−刈込湖(7:15)−−1971峰西の鞍部(8:45)−−2193峰南東尾根の途中のピーク(9:15)−−2193峰北端(10:50)−−A峰(11:10)−−高薙手前B峰(11:35)−−高薙山2180.7m(11:50-55)−−B峰(12:10)−−A峰(12:25)−−2193峰北端(12:45)−−2193峰南端(13:00-15)−−2193峰東尾根の先・西の鞍部上(14:10)−−取付点上の尾根端(14:45)−−刈込湖北岸(15:00)−−小峠(15:40)−−湯畑(16:20)−−湯元・駐車場(16:30)
  歩行時間  10時間 45分  ( 同じルートのピストンだった。)
【高薙山 2180.7m】

頂上の山名板・05.04.23

中央が高薙山

【概要】

湯元から小峠、刈込湖に進み、刈込湖の北西の沢から尾根に取付、2193峰東尾根の1791峰との鞍部の少し上に着き急登すれば尾根に上がる。 あとは尾根を辿る。 当初戻りは2193峰から南西への尾根を温泉ヶ岳へ進みたかった。 しかし同伴者の手指の凍傷のアクシデントで同ルートを断念した。 
ご注意この山は深く登山道はありません、誰にも会わないのが普通です。 笹、シャクナゲ、コメツガの薮があります。 熊などの怖い動物もいます、情報と周到な計画が必要です。 栃木の山深さを感じます。

【刈込湖畔は無垢の銀世界】

湯滝周辺から湯元まで雪道となった道路は雪はないだろうとノーマルタイヤで来た。 一面の雪に湯元の県営駐車場は真冬になっていた。 予定より45分遅れで湯元を出発する。 
今回の山行には愛犬「なな」は厳しいだろうと留守番とした。 湯畑の横を通って金精道路へ向う、雪に埋もれた階段にはくっきりとスパイク長靴の跡が付いていた。 長靴であるので初めは温泉の管理者の物と思っていたが金精道路まで付いていた。 足跡は金精道路を横切り登山道へ付いている。 先行者がいることは確実だ。 雪に埋まった三岳山腹斜面の足跡に靴を入れる。 急ぎ足で歩を進める蓼ノ湖の上辺りで先行者を見る、汗が出そうなので長袖を脱ぐため立ち止まった所だった。 20m先の方に「こんにちはー」と声を掛ける。 長袖をザックに入れ前を見ると姿は見えなかった。 上空をどんよりとした雲が早く流れている。 初冬の雪景色であるこれから長い冬を迎えるような感じがした。 天気は回復基調とテレビの予報であるが、北関東北部山岳部は完全な真冬となっていた。 小峠手前で先行の方に追いつき挨拶をして一緒に最後の坂を登った。 途中で登山靴でないことから感じていたが、スパイク長靴の主は「隣町のHさん」だった。 品のよさそうな紳士で山を楽しんでいる感じがした。 一言言葉を交わすとページに書き込みを頂いているので何度もお会いした気持ちがする。 小峠の雰囲気は道標が岩の前にあるいつものたたずまいである。 粉雪が降り続いているしかしやさしい降りである、温度5℃と隣町のHさんが教えてくれた。 小峠まではいつも 蓼ノ湖に降りて沢伝いに歩く事が多かったが今回は足跡を追って正規の登山道を歩いた。

歩き始めて1時間経過して体の血がスポーツモード変わりつつある。 小峠からは上方を歩く登山道を歩かずに、沢筋のルートを選んだ。 正規登山道は三岳を周回するように進むが途中から樹林の中を急に下る。 積雪時は沢筋を直線で進むのが良いと考えた。 動物の足跡も無い新雪に新たなトレースを付ける。 最近このような場合こだわってベストなトレースを付けようと考えてルートを選ぶ。 ドビン沢出合、尾根の先端が切り立った大岩の所を過ぎるともうその先は刈込湖である。 幾分上空が明るくなったこのまま急速に青空になるだろうと思っていた。 見慣れた景色であるが山部的には雪景色が一番美しい刈込湖を見せてくれる。 根雪+新雪は30cmあり粉雪の舞うさまは正に静寂そのもの。 銀世界と青空も良いが今日は墨絵の世界だ。 湖面は氷に覆われているが春を感じさせる、一部湖面が濡れてきている。 終日景色の変化を楽しみを目的にここだけに来るのも良いだろう。

隣町のHさん・氏山さん 小峠にて

早朝の刈込湖

【尾根取付から1971峰西鞍部へ】
去年より20日遅れての高薙山である、それだけに雪は僅か残る薮の多い予測ははハズレて完全な雪の山である。 刈込湖へ北西から流れ込む沢口に向う、ミズナラの林は枝に雪を載せて化粧している。 林の中にトレースを描いて行く。 前回の取り付き点探しながら尾根下をのぞきながら沢に沿って進む。 沢が両側の尾根に挟まれて狭くなった所まで歩いてしまった。 電柱の太さの柱の先に道形に見えるものがある。 柱には赤のペイントマークがされていた。 ここが尾根に上がるメインルートなのか。 前回は少し手前をアイゼンとピッケルで上がった、特にアイゼンがなかったら無理と思えた。 今回はマークもあるので気も楽だと足を踏み入れだが直ぐに道は笹に消えた。 急な斜面にピッチを切りながら一歩一歩登る、途中岩とシャクナゲが現れ強引に進むと支尾根の形が見出せた。 シャクナゲ帯を通過すると支尾根の先端に出た。 続いていた2人も続いて上がって来た、ホット一息ついた。 先端は両側を削られた所で尖っていた。

先端から進むと少し下ると支尾根唯一の鞍部がある。 ここにはペイントマーク、赤布マークがある。 懐かしいし尾根の形が見出せた、ここからは一度歩いているので地形は読める。 支尾根はコメツガ主体の樹林に包まれて眺望はないはじめ左下にあった沢はもう感じられなくなった。 何ヶ所かの岩、笹、の所を通過する、吹き溜まりアイスバーンとバラエティーである。 隣町のHさんはこの状況でも離れずに付いて来られる、お主やるなと思いながらピッチをつけながら進む。 歩いている途中で金田峠まででも行きたいと言っていた。
少し逸れるが金田峠下から峠への直登でもここ以上に新雪と急傾斜、着雪の岩場で難儀と思われる。 於呂倶羅山から2193峰の尾根に上がるには、ここは樹林の中なので雪の状況によってはベストなルートと思った。 

支尾根で最も眺望の良い雪棚に出た雪が無ければ笹に覆われた所であろう。 途中のアイスバーンが現れた所でアイゼンを付けた。 さすがアイゼンは雪面をしっかりつかんでくれた。 それにつけてもスパイク長靴でここの雪棚に到達した隣町のHさんの技に脱帽である。 この雪棚で隣町のHさんは下山する事となった。 その後の状況を考えるとアイゼンなしでは、直ぐ上の岩場のトラバースは危険過ぎると思われた。 雪棚は樹林の無い眺望が望めて下方に刈込湖の氷結した湖面が見えた。 人影はなく時折強風に巻き上げられた雪煙が湖岸を消していた。 岩場を巻いて通過すると鞍部と尾根の急な斜面を登り切ると主稜線に到達した。

於呂倶羅山からの尾根

尾根上から山王帽子の上に太郎山

【2193峰へ】
今回は新雪でワカンでも物足りないが踏み抜きを気にしなくても良いので装着する。 もちろんアイゼンとの併用である、しばらくは尾根からの景色に足取りは遅くなる。 時折雲の切れ間から日が差して明るくなる、しかし風は白根山、温泉ヶ岳方向から黒雲を絶えず送ってくる。 男体山はガスに曇っている、尾根からは雪をまとった高薙山を深い谷の先に見られる。 一息ついたあと2193峰へ向う、しばらくはヤセているが問題とならない移動である。 いよいよ2193峰本体に登り始める。 途中に岩場が現れるが以前のルートは覚えているもので立ち木を伝って上に出る。 2193峰の頂上部はやや平たい樹林である。 2193峰の最高点の南端は向わず、北端へ直行する。 峰の中央には吹き溜まりの高い丘が出来ている、これは前回もそうであった。 吹き溜まりの横に噴火口のような大きな穴が開いている。 どうして出来ているか今回も不思議に思った。 相変わらず風雪は強く厳冬期の山になっていた。 高薙山側の北端にはシンボルのダケカンバが主張するかのように一本立っている。

2193峰北端のダケカンバ

A峰大岩の上

【A峰〜B峰〜高薙山へ】
2193峰の中央から雪のスロープが高薙山に向って隣のA峰との鞍部まで延びている。 スロープは風が直接当たりアイズーンと吹き溜まりが交互にある。 問題にはなるものでないがコメツガの密生の樹林を進む。 枯れた枝が人の通過した所だけ無くなる。 雪が枝の裏まで付いたモンスターになりきれないのコメツガがA峰に手前に並んでいる。 ミニモンスター間をぬってA峰の大岩に立つ、大岩だと知っているから言えるが今日は岩は全く見えない。 今年の雪の多さ本当に驚きだ。 強風であり西の根名草山方面は雪雲に隠されていた。 A峰は360度の眺望の所であるが今日は遠望が利かず残念である。 日光連山の先に高原山がスキー場の白い筋を見せていた。 その前に川俣のダム湖が緑に見えていた。 A峰からB峰へは雪がより深くなり、直接B峰ピークへ向うのを止めて東側を巻いてピークの先へ回り込んだ。 立木につかまって強引に斜面を上がった。 高薙山山頂はいよいよ手の中にあるように近くに見えた。 吹き溜まりのをラッセルしながら下る。 戻りの苦労を軽減するためラッセルはややジグザグしながら下る。

最後の登りの途中で踏み抜いた、大岩と雪に隠れた樹の間だ。 この大岩の上に乗ると東に飛び出した感じの所で早速カメラで高薙山の頂上部を収めた。 今日今まで歩いた尾根も見渡せた。 スノーモンスターを交わしながら進むと枯れ木の林立する頂上の下に着く。 ここも雪が多く完全に雪に埋もれた上を歩けた雪の多さに驚かさせられた。 コメツガ、シャクナゲの上に無事に通過する、高薙山の頂上部はやや長いが三角点標石は奥にあるが直ぐに着いた。 
今日は前回歩いていたルートを覚えていた、ルート探しの時間は一切使わずに効率よく歩けた。 
頂上の南端の枯れ木に手を掛けて日光の山を見ながら立ったぞと気持ちの中で胸を張った。 そこからすぐに山名板のある所に行く。 3D山名板は健在だった、そのほかの山名板も以前と変わりなかった。 ブリキの達筆山名板の裏にマジックペンで「DJF 05.03.19」の書き込みがあった。 そのほかAKI山の赤物、 KUMOの山名板、マジックのものも健在であるしかし古賀志山の会は無かった。 雪下の三角点標石は姿を見ることなく低温の風に追われるようにピークを後にした。

山名板は変わっていなかった

DJF 05.03.19さんの書込が最新?

【B峰〜A峰〜2193峰へ戻る】
戻りは頂上の雪原を東側から回り込みながら南端の見通しの良い所にでた。 そこから薮が埋まった所を拾いながらシャクナゲ、コメツガ薮を通過する。 登りに付けたラッセル跡は歩き易く、帰りにとわざと傾斜を和らげた登りも上手くいった。 ,B峰そしてA峰はパスして巻いた。 2193峰までA,B峰を登り下って北端のダケカンバに戻った。 次に北端から南端のピークに向かった。 足跡も無い雪原は新雪にうず高い深雪である。 南の端のピークで遅い昼食とした。 冬場の昼食はパンだ、湯も沸かさない簡単にする、長時間じっとしない。 今回はピッケルからのテープが手袋に凍り付いて取れないのでインナーでパンをかじる。 氏山さんの差し出したソーセージをナイフで分けて食べた。 ペットボトルの水は凍って飲めない。 刻々変わる天候、風が巻き上げた雪煙が前の峰を覆う、雲の合間から青空も時折見える。 青空に合わせてシャッターを切る。

今回はここから2207峰へ向って温泉ヶ岳への計画である。 雪庇の通過に備えて50mのロープを持参している。 前回に比べて雪も多く条件は揃っている。 視界は遠望は望めないながらも、薄っすらと温泉ヶ岳も見える。
同伴者の氏山さんの様子がへんである。 黙りこんで手を手袋から出して感触を確かめている。 聞くと感覚が無い、色が変わってきたと言う。 手袋の中が濡れている、途中で素手で雪を食べていたので濡れたのだろう。 こんな温度の中手を濡らしたら凍傷になってしまう、手袋を毛糸の物に替えカメラ用のカイロを渡した。 見るからにつらそうだったと判断して高度を下げて少しでも温かい所への移動を決断し戻る事にした。 残念であるがまたしても新たなルートを目指せなかった。 眼前に2207峰が次の機会を約束したような顔をこちらにむけていた。 白根山は終日見られなかった、太郎山、女峰山だけは上空を青空が覆っていた。

2207峰

三岳

帰路は、刈込湖、小峠へ】
2193峰の頂上を南端から中央に戻る、途中にジェット機のエンジンの排気口、火山の火口のような穴がある。 穴から空気が吹き抜けているような感じである。 直径1.5m位有るだろうか、深く底は見えない。 吹き溜まりを巻いて登ってきたトレースに乗った。 風に背を押されるように樹林を急ぎ下る。 直ぐに崖の岩横を通過すると次に新雪の斜面を登りのラッセル跡を横に見ながら直降する。 後は尾根を忠実にトレースを辿る。 於呂倶羅山へ尾根から刈込湖に下った、支尾根の最後は登りより東の雪の緩斜面を快適に下った。 このルートが登りでも正解と思えた。

終日、雲と風の山だったが湖畔に来ると穏やかなものだった。 何枚か写真を撮って湯元に向う。 朝付けたトレースには多人数の足跡が付いている。 湖畔から忠実に戻ったがトレースは50cmの幅で綺麗に踏み固められていた。 グループによる雪のトレッキングだろうか。 少し自慢に思ったのは朝付けたトレースのみが新雪の上に一本だけ延々と続いていた。 逸れている踏跡もなく整然としていた、後に歩かれた方が整然と歩かれたのであるがベストのトレースを付けたと少し自信があった。 整然と踏まれていたので歩き易く快適にドビン沢出合、小峠に着いた。 ここからの踏跡も蓼ノ湖に降りたものはなく本来の三岳山腹の登山道へついていた。 途中には踏み抜きが多数有って乱れていたが順調に湯元にもどった。 朝の雪がすっかり消えてどうしたのかと思うような変わりようだった、今日の山歩きを無事に終えた。

小峠

湯元まであと僅か
【写真集】

太郎山

女峰山

三岳

高薙山頂から2193峰(左・奥)、A峰、B峰

刈込湖畔 (帰り撮影)

太郎山
  * 白根山、温泉ヶ岳、根名草山は雪雲に隠れていた、掲載写真の撮影時も折見せる僅かの
     晴れ間だった。

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