大佐飛山(おおさびやま)1908.4m NO.251-2
夏の大佐飛山を板室からひょうたん峠経由、夜行日帰りで歩く。
【山行日】 2005年08月20日(日)
             無雪期だから見れた標石
【山 域】 那須 
【地 図】



【周辺の山】
1/2.5万図 日留賀岳、板室
       地図(板室口)
       地図(ひょうたん峠)
       地図(大佐飛山

残雪期、「大佐飛山」、こちら>>
      「男鹿岳、こちら>>
      「鹿又岳」、こちら>>
【天 候】 月明かり、晴、午後(夕刻)雷雨 
【所在地】 那須塩原市 
【パーテー】 ノラさん、山部の2人
【区間タイム】
板室ゲート
(1h40m)−本部跡−(1h30m)貫通広場−(1h10m)−那須見台−(1h)−ひょうたん峠(1h50m)−名無山(1h10m)大佐飛山-(1h45m)−名無山(1h10m)−ひょうたん峠−(35m)那須見台−(1h)貫通広場−(1h)−本部跡−(1h)板室ゲート着     h:時間 m:分  

実歩行時間  約14時間 45分 (食事・休憩含むと16時間 40分)  
コースタイムは文末に記載

【大佐飛山 1908.4m】

 大佐飛山は周囲を大蛇尾川 木ノ俣川に囲まれた山域で、その中の盟主である。 板室口から塩那道路を歩くと木ノ俣川の対岸に百村山、黒滝山、西村山、大長山そして大佐飛山と長大な尾根が続く。 急峻な谷で囲まれているので主たるルートは黒滝山、大長山と尾根を通す東ルートとひょうたん峠、1622峰、名無山の尾根をたどる西ルートとなる。 どちらもハイ松、オオシラビソ、コメツガ、アスナロ、ダケカンバの自然樹林とチシマザサなどの深い薮だ。 大佐飛山は里から遠く開発の手が入らなかった所で「大佐飛山自然環境保全地域」に指定された所だ。 ここは自然の非常に厳しい場所から開発されずに手付かずだったのが自然の残ったのだ。 今回歩いた塩那道路も情けないことに一度も一般に供用せずの「金食い虫の道」負の遺産になっている。 大佐飛山は静かに周りの尾根に造られた道の行く末を見ている。 もう何もしないでそっとして置いてと聞こえるようだ。 この山は栃木で一番深い山で一般ハイカー向でない、目指す人も少なく、それだけに安易には近づけないと言う事だろう。 特にこの山に向う時は自然への配慮と自覚が必要だろう。

大佐飛山 ・ 1908.4m

名無山から見た、大佐飛山

【板室口から歩行開始】 長いアプローチ21`の歩き
 夏の大佐飛山の計画はノラさんからおおよその計画を聞いていたのであるが決行日は2日前にメールがあった。 今回のルートは板室から塩那道路経由ひょうたん峠から大佐飛山を目指すものである。 8/19夜10:00集合で那須塩原市の百村、板室に向った。 深夜の道路はスムーズに登山口の塩那道路板室ゲート前に到着した。 ゲートは入口から3.1キロ地点にあり、車はもちろん、バイク、自転車も入れぬ強固なものがある。 ゲートの前に駐車し翌朝に備えて直ぐに仮眠につく。 午前2時頃に目が覚めて横を見るとノラさんはまだ寝息をたてていた。 2時半前に起きて準備2時40分にゲートを越えて歩行を始める。 足元はスニカーにして軽量化(もちろん登山靴は持参)歩き易さ重視である。 満月の月明かりで明るい道を歩く途中には案内のプレートがある。 「慰霊碑」、「川見曽根」、「本部跡」、、、と続いて行くプレートが単調な歩きを楽しいものとする。  慰霊碑のプレート先で道路は舗装からダートの道に変わる。

 約1時間で川見曽根にここで水1リットルをデポし帰りに備える。 本部跡は木立の中で薄暗いヘッドランプを点灯して前日であろう水溜りのある道を歩く。 「三度坂」、「熊の巣岩」、「見晴台」まで来ると東の空がピンクに変わり始める。 「露の沢」、「石楠花岩」を過ぎ薄暗い道に掛かると左側にカメラがセットされていた。(このカメラが下野新聞掲載のバイク写真を撮影したものであろうか)  「貫通広場」で三度目の小休止する、ここまで10.5キロを2時間50分を要した。 「笹の沢」、「月見曲」と過ぎいよいよ登り道も傾斜をまして行く、遠く那須の白笹山方面が見え始める。 終始木の俣川に沿って歩いているので対岸の長大な峰々が見える。 あのピークが百村山、黒滝山、西村山、大長山、1813m峰、そして大佐飛山だなと、黒いシュリエットを顔を横に動かして見る。

 「那須見台」の手前から名無山の尾根に陽が射して陽の当たらない尾根とのコントラストが深い谷をいっそう深く見せている。 「月見曲」手前から見えていた男鹿岳は益々大きくなる、高度が上がると女鹿岳(1754m)の尾根見えなくなる。 「那須見台」では尾根の影で那須の山々は木々に遮られて遠望はない。 木々の切れ目からひょうたん峠先の稜線、鞍部が見え出す。 男鹿峠(男鹿岳への取付の尾根先端の所)に着いた、ひょうたん峠まではあと10分程ここまで来れば着いたも同然だ(ここには以前からペンキの缶が置いてある)。 ひょうたん峠手前の稜線で右手の土手に上り横川側を見るが、見えたのは男鹿川の源流部と福島県境先の雲海だけだった。 そうこうしているうちに「ひょうたん峠」の大きく膨らんだカーブに到着する。 現在時刻は午前7時36分、スタートが2時40分だから5時間を要したことになる。 途中朝食、小休止に時間を取ったからかな。
  

塩那道路歩きはまだまだ先まで

名無山、この奥に大佐飛山が

【ひょうたん峠】 いよいよ薮漕ぎである

 休むまもなく大佐飛山への準備に掛かる。 スニーカーから登山靴に履き替えて、上下雨具に着替える。 大佐飛山はここからは見えない、ひょうたん峠からは名無山とそれに続く1872峰と1870峰が前にどっかと立ち塞いでいる。 いよいよアタックであるひようたん峠から鞍部にちょっと下るとM大(形)プレートが文字が消えているが迎えてくれる。 ちょっと進むと踏み跡が消える、最近と思われる鉈目が付けてあったがその先が消えた。 右下に踏み跡があるので右かなと思って進むが尾根を外しているようで左に強引に薮を進むと踏み跡発見、すぐさまノラさんに声を掛ける。 尾根に乗るとアスナロが目立つその先に「水場」プレートが見える、ここが鞍部から水場へ降りる分岐であるが今回は飲水はパスである。 ストップと声を掛ける二台目のカメラが仕掛けてあった、動物調査とかと聞くが通行量調査としか思えない。 動作していないように見えたがどうなんだろう。

 ちょっと歩くと1622峰に着く薮も薄く歩き易い、ピークの先にはマークも2 3有ったが、栃木の山でよく見るキラキラものに出会った。 木ノ俣川と大蛇尾川の源頭部がこの辺なのだろうと言いながら笹の中の登りに踏み跡に進んだ。 1622mから1872mの笹の登りは250mもある、「高原山探訪」のYoshiさんの記録によると笹の中の踏み跡をたどった有るが、その踏み跡は笹に隠されなかなか見つからない見えたと思うとまた隠れる何度もその繰り返しだ。 樹林の中の笹は青々としてみずみずしい何度もノラさんと先頭を交代しながら笹を分ける。 約90分かかって名無山山頂に到着、ここにもM大プレートがありまた「ブリキ山名板」が置かれていた。 山頂はコメツガの老木が多数あるがいずれも盆栽のように捻じ曲げられた太い枝ばかりである。 コメツガ葉先にの松毬(まつかさ)をここで初めて見た。 冬の厳しさを真夏のこの時も感じさせる、ここで小休止である。

 樹木の下は笹は薄いが全体に密生している。 しかし背丈を越えるものはなくその点はありがたい。 名無山を10:00発このままでは帰りは何時になるだろうと時間ばかりが気に掛かる。 でも自身に言い聞かせてある所詮栃木の山であると、足を前に出し続けていれば何時になろうと戻れるだろうと。 頂上部から大佐飛山との鞍部に向うと景色が開け眼前に長い尾根が続きその先に大佐飛山がそびえている。 斜面(1700-1800m)では本州中部の山(2500m)で見られるハイマツが見られる、笹(チシマザサ)も濃く帰りが思いやられる、斜面の途中に露岩があった。 笹の背丈はここの鞍部の方が水場からの登りより深かった。 これが大佐飛山の薮なのだ、雪の時には感じ得ぬ本当の大佐飛山を堪能した。 概ね斜度は緩く歩き易いが1824mの尾根を過ぎ大佐飛山の本体を上がり始めるとやや南方向にぶれるがそのまま進むと先の尾根に空が混じり尾根筋が近い事を感じる。 そこから頂上は直ぐだった。

 
(
水場分岐にあった自動カメラ

名無山・山頂

ハイマツとチシマと岩 1780m付近

印象に残ったダテカンバ

【大佐飛山・山頂】 無雪期にここに立つ
 久しぶりに立った頂上は残雪期とは様子が違う薮に覆われたピークである。 三角点標石の周りだけが薮が無い丸く刈り取られている。 雪が深いせいでもないだろうが標石は頭をかろうじて見せている。 とくかく大佐飛山の標石を見ることが出来た、標石を見るのは容易いな事ではないと思っていたので感激である。 そのほかは以前と変わりないように思えた。 極小缶ビールを開け昼食の大福を食べる。 冬も樹林に遠望が利かなかったが、当然夏場は木々の葉が余計見えなくしている。 しばらくすると南の大蛇尾川側の斜面からガスが競りあがって来て山頂にもガスが掛かりはじめる。 午後には天候が変わりやすくなるのであまり猶予は無い、夏の大佐飛山山頂に立てただけで充分である。
  

 
山頂近くの笹薮を行くノラさん

山頂南尾根の雰囲気

【下 山】
 山頂を後にして下山に掛かる、倒木が隠れた笹原を下る。 ルートを確認しながら名無山への尾根に向う、上りに2時間強を要したものを1時間40分で名無山へ到着した。 名無山への上りのハイマツ混合薮はノラさんが先頭でぐいぐいと進んだ、名無山のプレートの横で一服の水と菓子は次への活力になった。 名無山を下り始めると遠くから雷鳴が聞こえ始めた。 男鹿岳の先で聞こえていたものが男鹿峠からの尾根に沿ってひょうたん峠に近づいてくる。 吹き上げて来たガスが霧雨に変わり始める、名無山を半分下まで下った所でひょうたん峠の上のピークに閃光が走った途端に周辺に、煙か水蒸気のようなものが立ち上った。

 峠に行く前に雷が立ち去ってくれないかと思いながら樹林の笹原下り続けた。 雨は本格的になり雨具は内外ともに濡れてた。 1622峰、水場、そして最後の峠への上りに、行きにははっきりしなかった踏み跡をたどると鉈目の所に出た。 これでは分からなかったはずだ、踏み跡といっても途切れているものが大部分だった。 ひょうたん峠(塩那道路)に戻った時は雷は鹿股岳から日留賀岳の方に進んでいった。 峠でやや小降りになった所で靴を履き替えてこれからの道路歩きの準備をする。 次の雷鳴が横川か福島県境尾根から近づきつつある。 振り返れば名無山方面はガスに消えていた。

木ノ俣川の深い谷

ガスの名無山

【雷雨の追われて】

 20キロの長い距離が待っている。 閃光と雷鳴を聞きながらも歩みを緩める訳にはいかない。 背のザックは水、食料を食べて軽くなった。 雨粒が頭巾を伝わって雨具全体に流れる、顔を上げると雨粒が叩く、自然に下向きになる。 男鹿峠コーナーを過ぎればまずは一安心である。 頭上では絶え間なく閃光と雷鳴が続く。 雷の進路は鹿股岳方面には行かず深山ダムと塩那道路の尾根を下り進んでいるようだ。 祈る気持ちもあるが慣れると近くに落ちるとは思えなかった。 子供の頃父と家路を急ぐ時近くに落ちた時の状況を経験しているので危険とは思えなかった。 こんな状態が車直前まで閃光と雷鳴がお供した。

 深夜そして早朝の暗い中の百村山、黒滝山、大佐飛山の尾根、朝日を浴びた尾根、夜のとばりに黒くガスに煙る尾根一日中見続けた大佐飛山も歩く路面が舗装に変わると山陰に消えた。 里の光がキラキラと見える、雷の光の柱が百村、塩原、西那須のに落ちている。 ヘットランプをつけながら板室ゲートに着いた時はさすがに疲れた。 ひょうたん峠から1分取るか取らないかの休憩を2、3回だけで3時間半歩き通した。 折り返してからは終始ノラさんに引っ張られるように歩いた。 一人だったらあと1時間プラスだったと思う。 ノラさんは栃木の山に精通した方で終始楽しく歩けました、ありがとう。

【備 考】

 
ひょうたん峠とは昔ひょうたん池があったらしい地点なのでその名がついたらしい。 昭和 6年小早川元冶氏の「実見談」書によると、『男鹿岳にも男鹿沼が山頂近くにある。』、とある。 今はひょうたん池は道路工事で消滅したらしい、高層湿原だっただろうにと残念である。 ひょうたん峠の位置は塩那道路の「記念碑」のプレートの所にあったと言う、大佐飛山への水場へ降りる所のコルではありません(水ぽいですが、)。

 記念碑の所に記載されていた路程によると塩原から29.2Kmで、板室から21.6Kmとある。 手前約500mを今回はひょうたん峠と記しているので注意。(板室から約21K地点である。) 記念碑の所にはプレハブ小屋があり「104建設大隊 塩那の峻険を拓く」と書された記念碑もある。

ポーズをとる山部

名無山で、ノラさん

経過タイム】
小山(8/19 21:50)==鹿沼IC・西那須野IC==百村の塩那道・板室口(23:30)/仮眠・
板室ゲート
(8/20 2:40)−−川見曽根(3:40)−−本部跡(4:00)−−三度坂(4:12)−−熊の巣岩(4:16)−−見晴台(4:32)−−露の沢−−石楠花岩(4:46)−−貫通広場(5:28)−−笹の沢(5:50)−−月見曲(6:12)−−那須見台(6:39)−−1754峰南西尾根先・男鹿岳口(7:26)−−ひょうたん峠(7:36-8:00)−−水場(8:19)−−1622峰(8:23)−−名無山(9:55-10:00)−−大佐飛山(12:12-40)−−名無山(14:24)−−1622峰(15:12)−−水場(15:14)−−ひょうたん峠(15:34-46)−−1754峰南西尾根先・男鹿岳口(16:00)−−那須見台(16:21)−−月見曲(16:38)−−貫通広場(17:20)−−石楠花岩(17:31)−−見晴台(17:52)−−三度坂(18:07)−−本部跡(18:16)−−川見曽根−−慰霊碑−−板室ゲート着(19:18)==百村で日帰り入浴に入る(20:05)==西那須野IC・・・鹿沼IC==壬生==小山(21:55)
                                歩行時間  16時間 40分 (食事・休憩含む)

【ご注意】
 大佐飛山は栃木で一番の深い所であり細心の注意が必要な所です。  この日も誰にも会いませんでした。 登山道はありません何時間も連続して薮の中を歩きます。 大自然がそのまま残された地域で自然を大切に、小人数の方がやさしいのではないでしょうか。 夏のこの山は読図力と体力と精神力の三拍子揃って可能な所です。                       

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