【山行日】 2004年 9月 19日 (日) |

男鹿岳の山名板・再ペイントした。(文字のみ) |
【山 域】 男鹿山塊・塩那道路 |
【地 図】 1/2.5万図地理院(日留賀岳 栗生沢)
地図(男鹿岳)
地図(ひょうたん峠)
地図(横川周辺) |
【天 候】 曇りのち雨のち晴れ、午後は晴れ |
【所在地】 栃木県黒磯市、塩谷郡藤原町 |
【同行者】 単独 途中で烏ヶ森の住人さんと合流 |
【関連ページ】 男鹿岳 (2005.07.18) |
【参考ページ】 鹿又岳、日留賀岳 (2004.09.11) |
【コースのタイム】 アクセス・全行程
自宅発(2:18)==鹿沼IC===(東北道)===西那須野IC(3:00)==関谷のコンビニ(3:05-15)==横川・ネイチャーセンター(3:43-4:28)−−横川牧場B入口(4:58)−−尾ヶ倉沢橋(5:15)−−白滝橋・わさび畑林道分岐(5:30)−−桂沢橋(5:39)−−高泉橋(5:43)−−胡桃橋(5:55)−−栃の木橋(6:00)−−男鹿林道・現在の終点(6:15)−−古道・獣道−−男鹿川渡渉点(7:05)−−県境尾根(8:55)−−尾根北端(10:55)−−男鹿岳・1777.1m(11:00-55)−−女鹿岳・1754m(12:30)−−塩那道路(12:40-13:05)−−大佐飛山分岐(13:20)−−記念碑・ひょうたん峠(13:22)−−笹原のピーク標高点1472m(14:35)−−白滝沢近接・(15:19)−−壊れた木橋−−ムジナ沢橋−−わさび畑の林道(16:10)−−白滝橋(16:30)−−横川牧場A入口(17:01)==ネイチャーセンター着(17:15-35)==中三依温泉・男鹿の湯(17:55-18:30)==鬼怒川温泉==(日光宇都宮道・東北道)==自宅着(19:40)
歩行・山中時間 13時間
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【今回のルート(横川から)を決める】
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男鹿岳と塩那道路の男鹿山塊を冬に踏破したナスノガルータさん常吉さんが歩いたのが頭の中にあった。 Yoshiさん、烏ヶ森の住人さん、RKAさん、皆さんの情報、そして上野さん(「関東ぐるり一周山歩き」著者)の著書のルート(一部)を今回の計画に入れた。 また直前に烏ヶ森の住人さんの男鹿岳計画を知り実行した。
日本300名山の中で、一般登山道が拓かれていない山の一つと紹介していると聞いたことがある。 福島・栃木県境に連なる男鹿山塊には、大佐飛山(1908m)日留賀岳(1849m完)鹿又岳(1817m)等男鹿岳より高い峰がある。 日本三百名山に選定されたのはいかなる理由であろうか。 原始性を見れば大佐飛山であろう、鹿又岳も男鹿岳は条件は同じと思われるか選定には選者の私心が入ってしまうのであろうか。
前週の2004.09.11に日留賀岳ルートから塩那道路に出て鹿又岳に上った。 その後ひようたん峠から男鹿の前衛1754m女鹿岳下まで偵察に歩いた。 この男鹿山塊の塩那道路に出るには色々のルートが考えられる。 @小佐飛山〜長者岳から道へ A日留賀岳から道へ B塩原・土平ゲートから道へ C黒滝山〜大佐飛山から道へ D板室ゲートから道へ E横川から道へ の6つのルートが一般的なルートである。 この他深山ダムからと福島田島オーガ沢・男鹿川を残雪期に男鹿岳へそこから塩那道へ出たとの報告もありました。 今回は横川ルートをまだ歩いていなかったのでこのルートにした。
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【横川の男鹿ネイチャーセンターから福島県境へ】 |

ネイチャーステーションから日留賀岳(中央)、鹿又岳(左奥) |

男鹿川の渡渉点付近 |
横川の男鹿ネイチャーステーションに以前NO.260向山を歩いた帰りに偵察に来た事がある。 いつかはここから歩く事になると思いながら戻ってきた事が昨日のように思い出される。 ネイチャステーションのゲート手前50m程の少し広がった場所に車を止めた。 隣に白の軽四が止まっていて出発の直前に起き出してきた。 今市の渡辺さんで山菜採りとのことで、横川の放牧場を作った時には建設に来ていた方でした。 B放牧場入口まで一緒に真っ暗な道を歩きました。
今日のルートは地図上にある道を男鹿岳下まで進み、福島県境の尾根に立って一気に頂上を狙うシンプルなルートである。 しかしこのコースを歩いた報告を見聞きした事はない。
白滝橋手前の林道分岐(チェーン有り)を入り白滝沢を進みひょうたん峠へ上がるのが一般的だろう。
横川放牧場を過ぎるとうっすらと明るくなってきた。 尾ヶ倉沢の橋を渡ると最初のポイントの白滝橋の手前の林道分岐がある。 右の林道にはチェーンが掛けられていた。 今日は直進し少し下ると沢に架かる白滝橋がある、左への林道も県境に向かっているが違う。眼下の沢は白く小滝の連続である。 次々に沢があるのでその沢の数だけ橋もある。 桂沢橋、高泉橋、胡桃橋、栃の木橋がある。 途中に「男鹿山林道(自動車道)起点」と書いてある柱がたっている。 栃の木橋から進むと道が二つに分岐する所に到着する。 左は川に下りて行き止まりになる。 右の道が主道のようだこの先は草がびっしりで葉がぬれているので雨具のズボンを履く。 背丈程の草を分けて進むと道はいつの間にか消えて踏み跡になり獣道のようだ。 道が沢になっていたり斜面が崩れて高巻きしたりで地図上の道は存在はないと考えた方が良いようだ。 この先に沢を道が越える所があるようだ、状況が悪いのでここで沢を渡って対岸に取り付く決断をする。
ここまでなんのために道を作ったのだろうか、解らないそして自然の力で元に戻っている。 これから歩く塩那道路も自然に戻すのこそそのままに放置することだ。 現在も工事が行われている何のためにしているのかスタートが曖昧、終わりだけでもすっきりしたいものだ。
一旦、沢(男鹿川)に10m降下する、飛び石で渡る(7:05)。 対岸は急傾斜だが上がれない訳ではないだろう。 チシマザサの薄い所を選んで15m程上がる。 しかし最初から笹の濃い所だったようで少し下降して涸沢に下りる涸沢の中はトンネルの要になっている。 どんなに急でも何も無い所は歩きやすいしかしすぐに沢は消えてしまう。 福島県境の尾根へは急である、沢横のアスナロ大木のある尾根を上がる事とする。 尾根には何ヶ所か波状にアスナロとチシマザサの蜜薮がある。 しかしここの尾根はアスナロの大木が多く陽が射ささないのだろうかひ弱い笹で救われた。 取り付きから1時間50分(8:55)県境の尾根に到達する。 ちょうどこの辺だけがアスナロなどの大木があり笹も薄かった。 ここで朝食を摂り一服する。(いつも小分けに食べている)
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烏が森の住人さんと会えて感激です |

割れた板を乗せ重ね撮影する |
【福島県境尾根から頂上へ】 |
男鹿岳の本体の県境尾根に取り付けばルートを間違えることはない。 慌てることは無いようだ、しかしここは天気がめまぐるしく変化する所のようだ。 わずかな時間でガスが田島側(福島県田島町)から立ち込めてくる。 夜明け近くは青空も見えたがその後曇ってきた、沢筋と樹林の中で天気の変化がつかみ切れて無かった。 ガスはすぐに笹の葉に雨音を立てだした。 雨具の上着を急遽付ける、カメラをはじめすべてザックに入れる。 ザックカバーは無いのでビニール袋で外装をすっぽり包む。 完全な雨になり樹林が切れるといよいよ強い降りになる。 チシマザサの蜜薮も本格化し始めこれでもかと立ちふさがる。
ここからは急な斜面と蜜なチシマとの格闘であった。 予定の11時まではまだある気持はまだ余裕がある自分でも不思議なくらい冷静である。 開き直りであろうか今になってはとても後戻りは出来ない、どこかでそう思っていたのだろうか。 ここからは特徴などの無いとにかく笹との格闘であった。 今日の成果はチシマザサのあしらい方であろうか、これも那須の鬼面山での経験からの延長線上にあるのだろうか。 笹は背丈は2m程だが斜面は急で笹の中に埋もれている。 雨音だけの世界である静かに深山の薮の中で時間が過ぎていく。 途中の倒木にはきのこがびっしりとあった。 倒木に脛を打ちつけない出血している感じがする。 しかしそんな足を見ても使用がない全身ズブ濡れである。 笹をつかんで懸垂する所もあった。 何とか開けた所から先を見ると大きな枯れ木の見えるこんもりとしたピークが見えてきた。
笹を選んで木々を避けて歩く、コメツガかオオシラビソが現れると高度が高まった実感がする。 大木に尾根を占領されて巻いて根元に上がるとその先の枝先に古くなった赤布があった。 田島からの林道から尾根を上がって来たものだろう。 隣の尾根と合流したらしい頂上が近い事を実感する。 チシマザサの密生する頂上の北部の西側に着いたようだ。 深い笹原の先はオオシラビソの大きな木々とダケカンバの白い木が見える。 主になるピークの無い平たい頂上は生育の良い青々しい笹が密生している。 笹を分けると風雪で曲がりくねった枝先2m程の高さに3Dの見慣れた山名板のシュリエットが目に入った。 一気に今までの薮の辛さは忘れた。 時間は11時ちょっと2分前予定通り到着した。 到着に合わせて急に雨が止んだ、風が木々を揺らす上空に青い空が少しづつ見えはじめた。
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大木の尾根急登が続く |

福島・栃木県境尾根 密生のアスナロのある付近 |
【男鹿岳・1777.1m】 |
山名板が曲がっていたので外してメンテナンスをする。 持参したアクリルペイントで字を筆でなぞる。 積雪が山名板を埋めてしまう所では表面の塗装部分は剥げ落ちてしまうようです。 それも味があって良いだろう、三角点の標石の真上に取り付ける。 何枚かカメラで撮影する、高いダテカンバノの高みにM形のMWVブリキのプレートが見える。 積雪時のものだろうビニル紐が風に揺れている。
昼食を食べているとチリンチリンと音がする、ヤッホーと叫んだが答えは無い。 しかし4,5分すると笹が動く音と鈴の音がする、こちらですよと声を掛ける笹を分けてこんにちはと現れた。 この日会うのを楽しみにしていた烏ヶ森の住人さんであった。 はじめは実を言うと違う方かと一瞬思った。 鹿又岳に行ってから男鹿岳との事だったのでこんな早い時間に来られるとは思っていなかった。 お会いしてしっかりと硬い握手をした。 思っていた事の大部分は話は出来なかった。 ずーと前からお会いしていたような錯覚さえ覚えた。 何も語らずとも気心は知れているような心持ちだ。
その後頂上ではその他の山名板を探した、数年前まであった大きな山名板は割れてオオシラビソの大木のそばに落ちていた。 無雪期であるので三角点も顔を出している。 那須白笹山から大峠までが山頂から見えた。 風が雨雲を振り払い南方山々がの逆光に青々しく見られた。
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頂上手前の笹原の中の倒木ときのこ |

三等三角点標石 |
【塩那道路で分かれて記念碑のある所まで】 |
烏ヶ森の住人さんと二人で男鹿岳山頂から下った。 山頂の樹林を抜けると展望が開ける、ガスが晴れて那須の峰々、眼前にどっしりと大佐飛山と1872峰などどっしりと木の俣川に座っている。
目前に大きく聳える山は大佐飛山。 青い山が幾重にも重なり合っている。 山頭火の『分け入っても分け入っても青い山』の句が浮かんでくる。 山頭火は夜明けの大山(だいせん)であるが、本来のこの句の意味合いと違い句の「分け入っても分け入っても」がなぜか男鹿山塊に似ているようでこの句が思い浮かんだ。 男鹿山塊、深い青い山、山エキスを含んで聳えている。
1754m峰(女鹿岳)の樹林を抜けて下の道に向かう、急な最後の笹原では滑って足が木に挟まれるが抜け出して道に下りた。 烏ヶ森の住人さんとはここでの別れである。 烏ヶ森の住人さんはここから板室までの長い歩きが待っている。 山部は名残は尽きないがあるひょうたん峠へと向かう。 途中大佐飛山へのコーナーの所で時計を見る20分で記念碑に到着する。 ここは先日男鹿岳取付点(峠)まで歩いているのですぐにひょうたん峠ではトイレ脇を通って下りに向かう。 塩那道路、この道が山歩く人達だけの道になるのはいつの日になるのだろうか。 そうなるともっと深い男鹿山塊となるのだろう。
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頂上にある測量用の板 |

男鹿岳の頂上部・女鹿岳の樹林前から |
【ひょうたん峠からの笹道を歩く】 |
笹道を歩き初めて20分道が消えた、一面の笹原でまったく道は解らない、足が地に着いていない。 地形図の南西の急斜面を緩斜面に向かう道が解らない。 探し回るのは辛い、それはそれは深い笹で男鹿岳の県境尾根にも匹敵するもので探すのを諦める。 白滝沢の上に最終的に出れば良いだろうと漠然と下る。 斜面は徐々に急になりだしてやや西に、標高点(1472m)に向かう事とする。 地形図目標点の標高点(1472m)は、両脇に窪地がある小ピークで地形は一見して解った。 この一帯は全て樹林で濃いチシマザサが地表を覆う。 標高点・1472mのある地形が確定するまでの一時は、真剣に地図読みとコンパスで方向を定めた。 窪地下には道がある筈である、窪地の地形が特定出来れば笹を分けて進むと道形を発見した。 笹に埋もれた道はチシマザサが両側から覆いかぶさりトンネル状ですんなりと歩かせてくれない。 竹のような太い物もある古いマーク類も有るが少ない陰湿なルートだ。
そんな歩きに耐えられなくて地図を見ると九十九に折れる所で一気にショートカットする。 蔦につかまり急斜面を逆クライミングである。 運良く(地形図は見ています)白滝沢の上にドンピシャに出た、内心は道がありほっとした。 今日は地形図が良く見えているようである。 そこからは白滝沢に沿った廃林道を何処までも何処までも下る。 途中に二ヶ所木の壊れた橋があった、前黒山(塩原)の壊れた橋と同じだな思った。 ムジナ沢を越えると道が崩落しているので高巻きして林道に出た。 この林道はわさび田への道でわさび田へ下りる道が3本ある。 程なく白滝橋手前でチェーンの掛かった林道分岐に着いた。 ここまでひょうたん峠から3時間10分であった。 途中では今日は笹の中にお泊りになるかなとも思ったが地図が見えた(読めた)ので運良く戻れた。 わさび田からは話声が聞こえたやれやれとなった。(16:30着)
標高点の1472mの所の地図 地図(標高点 1472m) |

ひょうたん峠を西の笹原から見る |

標高点1472m峰の笹原 |
【男鹿ネイチャーセンター】 |
白滝橋まで朝ネイチャーステーションから1時間だった。 下りだから最後の水にと持ってきた氷をかじりながら歩く。 りんごをナイフでカットして剥いて食べながら歩く、なんと行儀の悪い事であろうか。 軽トラが一台わさびを積んで通り過ぎて行った。 尾ヶ倉沢を過ぎると横川牧場の入口がC,B,Aと等間隔に並んでいる。 最後のAを過ぎた所で軽トラが来た親切に止まって声を掛けてくれた。 荷台に乗せて頂きゲートに10分ちょっとで到着した。 荷台には先客の甲斐犬が乗っていた、近所にも甲斐犬がいるので甲斐犬だとすぐにわかった。 この地域には熊がいるので草刈の時など一緒に連れているのだろう。 お礼を言って横川ゲートで下りた。
男鹿岳には今日沢を渡河した所のもう少し先から沢を越えて男鹿峠先の所へ出るルートがあるらしい。 帰りは中三依の「男鹿の湯」で汗を流して、家路についた。 |
【ペーシと情報をいただいた方々】 感謝です。 |
常吉さんのHP:ナスノガルータさんと一緒に冬の男鹿山塊を踏破これに刺激されました。
Yoshiさん:山歩きの達人、植物、文献も緻密で山歩きの目標の人である。9/20には馬引峠へ。
烏ヶ森の住人さんのHP:栃木の山々を一緒に歩く錯覚させ覚える、尾根の達人です。
RKAさん:精力的に栃木の山にこだわっていただいている方で上野さんを紹介して頂きました。
上野さん:著書の「関東ぐるり一周山歩き」は山歩き(薮)のバイブルにしている。
ノラさん:細かく関東の山々はほぼ歩かれた、最近は栃木・会津に教えられる事多数あり。
ダイさん:地元で毎日山を見られる位置に住まわれて居られ旬な情報を頂いています。
・帰りに男鹿ネイチャーステーションの上野稔氏から男鹿岳の情報を頂きました。
このコースは一般にはお勧めできません。 横川からは残雪期からが良いように思われます。
計画の時は、他の情報も併せてご自分にあった無理の無いようにお願いします。
04.10に男鹿岳に向かったとされる。二名が遭難しました。 行方不明者は残念ながら死亡されました。
この時期の北部山岳部は天候は急変しやすく、注意が必要です。 また一般の方のひょうたん峠〜横川間の無雪期の通行は避けたほうが良いと思います。 この山域はこの地域の詳しい方との同行が無難です。 男鹿岳は栃木の最深部、情報と計画は注意が必要です。 |