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高山2峰(三等三角点) NO.354 |
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日光太郎山の北方尾根にどっしりと、高山2峰がある。 単なる尾根歩きでなく変化に富んだ地形がルーファンが楽しめる山としている。 素晴らしい眺望や高山帯の植物も堪能出来る。 このような山があったとは、「栃木の山は懐が深い」を改めて知った。 |
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高山2三角点峰 地形図 日光 / 男体山
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【山行日】 2009年 6月 7日(日) |
【天 候】 快晴 |
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【山 域】 太郎山 |
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【地形図】 日光
男体山「高山2」 こちら>>
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【同伴者】 単独
【関連ページ】「熊の沢山」「熊の沢」峰 こちら>>
「高山」 こちら>>
旧宮内省 宮界標 こちら>>
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【標石データ】
・ 冠字 白 第 47号
・ 基準点コード 539-13-9901
・ 標高 1848.92 m
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【所在地】 日光市川俣字大事沢
【緯度 経度】
36°50′06.69 / 139°29′39.77
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【山名 ・ 高山2峰】
栃木には国土地理院の地形図に高山という名の山が4つある。 その内の3つが奥日光ある、近くにあるので国地院地形図では山名に数字を付け区別されている。 よく知られている「高山」は、中禅寺湖畔に聳える「高山3 」1667.4m峰である、ハイキングコースとしてよく知られ一般に高山と言えばここを指す。 次の「高山」は高薙山の北方尾根にある「高山」1683.2m峰で光徳からの山王林道はこの峰に沿って川俣に向う、旧西沢金山跡を過ぎると左側に「高山」峰がある。 その西側は湯沢でその奥に天然記念物「噴泉塔」がある湯沢の深い谷でホリホリ沢の源流域となる。 那須塩原市にも「高山」
273.87m (成功山)がある。 さて、今回の「高山2」1848.9m峰は太郎山と鬼怒川・川俣湖を結ぶ尾根上の中間にある峰である。 尾根は大事沢と熊野沢の深い谷に挟まれ聳えるのが高山2峰である。 この山は栃木の深山を歩かれる篤志家以外には知る人は少ない、深くて遠い山とはこのような山を言うのだろう。 また、昭和20年代までは日光と川俣を結ぶ古道が通っていた、しかし現在はその道はない深い山とはこんな山を言うのかもしれない。
(このページでは、高山2三角点峰を高山2峰と記する事とする。)
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↓「高山2峰」赤い線が古道

林野庁日光森林管理署 「川俣」管理図の太郎山付近
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【ルート選定】
この山へのルートは川俣萱峠から延々と尾根を歩くのが基本なのであろう。 尾根の生成は太郎山の溶岩流と薙(沢)谷の侵食で作られた尾根峰であり太郎山と結びつけてルートを選び歩いた。
高山2峰は、太郎山から北方に派生する大きな尾根が二本有るがその東側の尾根上にある。 その尾根は大事沢と熊野沢に挟まれ先端は川俣の瀬戸合峡の萱峠まで延びる長大な尾根である。 その尾根には三角点が二つ有る、萱峠に近い所に「
臼窪 ・三等三角点峰 」 標高1291.2m がある。 地形図はこちら>>
高山2峰の標高は1848.92mである、太郎山登山口の標高約1000mであるので標高差は約850mの自然林の山歩きとなる。 尾根の両側の沢は深く切り立ち沢から高山2峰への直登は無理であろう。 先日、林野庁日光森林管理署発行の「国有林管理図・川俣」に大事沢源流部より高山2峰への破線のルートを見た。 こんなルートがあったのだと心躍る気持ちで管理図に注視した、旧宮内省測量の界標調査で太郎山周辺を調べているのでこのルートに決めるのに時間は掛からなかった。
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計画図)、ピンクのルートを描いていたが ■が歩いたポイント
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【往路 ・ 高山2峰へのルートは、】
早朝の太郎山登山道には只一人もいない。 新薙に沿った道は急な上に掘れて荒れたものでこのルートからの太郎山は好きではない。 しかし、登山路(1868m)に国有林「見出標乙38イ1」がある、ここから登山道と分かれる。 開かれた国有林の境界に沿って約50m進むと開けた場所に出る。 以前有ったのだろう木材集積中継地のようで鉄索類が錆捨てられていた。 ここには「見出標
乙38」があり、木々に塗られた赤ペンキを追って「見出標 乙16」まで進むが分かりやすい。 この界標は旧宮内省測量隊が測量し設置したものであり日本の黎明期の測量史に思い馳せながら界標(標石)を見て歩く。
「見出標 乙16」は薙を越えた縁でここからの界標は薙に沿った尾根を太郎山頂に向って登って行く。 ここの「見出標 乙16」から標高を維持しながら地形図の標高点1879mポイントへ向う。 鹿道とも旧作業路とも思える樹間を進むとポイント付近に着く。 小開けた空間に出ると切り株に白い苔が付いているに目が行くが、暗き樹間からこちらを見ている気配を感じる、良く見ると金剛童士像である。 火炎の光背を背負っての立像である。 像を挟むように祠がある、近寄ってみると石段や小屋跡の礎石がある。 ここが修験の寒沢宿跡だと直ぐに分かった。 修験道が盛んだった明治以前の日光回峰行の宿跡が日光の山中にあるがそのひとつである。 ここが太郎山と小真名子山の鞍部で回峰行路上であることがわかる。
( * 温泉岳先の念仏小屋も宿坊であった。)
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寒沢宿跡の祠と金剛童士像
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この日の大事沢の分岐付近、水は見られず
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この先の大事沢源流部を見つけるのには時間は要しなかったが、沢の中に樹木が繁茂し歩行は困難に見えたので鹿道を歩く。 ヌタ場があり鹿の住み家のようだ、付近は道が縦横にある。 標高点2066m峰からの派生尾根が大事沢分岐付近に落ちていく、そこを巻いて西進し標高約1800mを維持しながら北進するのがルートである。 しかし、宿跡からは一切の踏跡は見られなかった、私は大事沢分岐を見ずして戻れない気がして沢に下る事にした。 崩落したガレ場には手掛りは無くロープを三回支点を取り直しながら下った。 沢は自動車ほどの岩があり、滝もあり巻きながら下る。 小真名子山からの沢は涸沢であったしかし、降雨時は相当の水量があると思われる。 派生尾根先端部には鹿道のような所があり回り込む事には問題ない。 ここから太郎山の山腹を高山2峰手前の鞍部を目指して標高を維持しながら暗き樹林帯の苔むした倒木を乗り越えながら進む。 途中で一服していると四、五頭の鹿が突然表れニアミスにこちらも驚いた、その後はピーイー、ピーイーと警戒声を発しながら樹間に消えていった。
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広大な原野が遠望できる、先は女峰山
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高山2峰の鞍部
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太郎山北方の高山2峰の上部標高点1932mから大事沢への薙(崩落カレ沢)があ.る。 薙にはロープで下れても対岸は溶岩の張出しがあるので薙越えは無理と判断した。 しかたなく薙の上部まで上がり薙を巻いて越えて約1900m峰へ達した。 これで太郎山から高山2峰の尾根上に乗った、『やあー疲れたなー』、ルートが確立すれば後は前進あるのみで気力も出てきた。 ここから120mほど標高を下がるまで下った、途中痩せた尾根や岩場があったが問題は無かった。 標石調査の小道具も持参しザックが重い、高山2峰手前の鞍部にザックを木に吊るしてカメラなど最小限の装備でピークに向った。 尾根にシャクナゲ薮があったが問題はない、高山2峰の頂上部は南北に長い樹林の尾根である、途中の大岩の所付近から標石が見えた時には、『やれやれ着いたわい』と声が出た。 標石のピークから見た先の尾根は明るく見えた。 写真やデータ測定後直ぐにザックの鞍部に戻った。
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「高山2」三等三角点
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【復路 ・ 太郎山を目指して前進あるのみ】
高山2峰鞍部のザックデポ地点からは往路へ戻る事も出来るが途中の薙越えや大事沢歩きを嫌って太郎山に目標に定めた。 これは界標調査の為に太郎山直下の東斜面を見たかったからでもある。 標高点1932mポイントまでは今歩いて来た尾根を効率よく歩いた、途中で木にめり込んだ「見出標」を1つ見た。 標高1910m鞍部から標高2000mまでの尾根がこのルートの最難間である。 薮と切り立った崖、大岩の積み重なった尾根は上りの通過でほっとしたが、下りだったらどうしたのだろうか。 標高2000m付近のシラカンバの樹林に着くと傾斜は落ち着き一息ついた。 ここまで来ると太郎山は近くなった、熊野沢を挟んだ隣の尾根は垂直に切り立った崖の岩肌が見える、こちらの足元はどうなっているが不明であるが想像は出来る。
シラカンバの先は開けて明るいと急ぎそちらに向うとそこはガレ場(薙)で熊野沢の源頭部であった。 火山礫のガレ場は中央部が掘れて急激に下方に落ちていっている、そこを喘ぎながら歩を進めると小雪渓があった。 手持ちの水が少なくなったので雪を少し掘って口に入れ喉の渇きは落ち着いた。 ガレ場途中で時刻を確認すると13時を回っている、先を急ぐがこのガレ場にある植物が沢山あったこれは収穫だった。 標高が上がると更に遠望の絵が素晴らしくなっていく、女峰や小真名子を鳥瞰しているようになってきた。
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太郎山北東斜面の標高2300m付近から中央が小真名子山、奥左は帝釈山、女峰山
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標高2300m付近からルート目標を東斜面に向う事とする、それは明治の界標の事が頭を過ぎったからである。 ガレ場から樹林に入るとドンピシャで予想通り界標(宮 界甲六九〇)を発見した。 持参した小道具で標石を掘り出し刻字を確認、データと写真撮りした。 その後山頂方面も調べたが疲れたので今日はこれまでと界標調査は切り上げた、ガレ場(薙)とコメツガ薮を強引に通過しお花畑上部の登山道に出る。 ここから登山道を下って太郎山登山口に戻った長い一日だった。
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中央の雲の影の先が「高山2峰」、左が熊野沢、右が大事沢、奥が川俣湖
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熊野沢源頭部のガレ場
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雪渓、背後が太郎山
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宮 界甲六九〇
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【所要時間】
太郎山登山口 5:00 - 界標(宮界乙38) 5:40 - 界標(宮界乙16) 6:05
- 寒沢宿跡 6:25 - 2066m標高点下 6:55 - 大事沢内分岐 7:25 -
1932m標高点 8:25 - 高山2峰・標石 10:20 - 1932m標高点 11:45 -
尾根2000m付近 12:55 - 太郎山頂直下・界標(宮甲690) 14:00 - お花畑
14:35 - 太郎山登山口着 16:45
* 「高山2峰」へは、明瞭な道はありません地図読みと体力が必須、安易に近づけない山です。危険な所もあります一般の方にお奨めできません。
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【あとがき】
今回は現地の状況が全く分からず予測できない、薮だけなら体力勝負であろうが、深い谷に挟まれた高山2峰のへルートは限られる。 奥日光の山々は火山特有の薙(なぎ)が多い、単なる涸れた沢ではなくその縁は溶岩が固まった所も多くオーバーハング状態でとても私の力では登ることは出来ない。 それでもガレ場や崩落地通過ではロープが必須なのは何度も経験しているので今回も50m(9mm)を持参した。 時間に余裕があれば踏跡探索をもっと出来たのであろうが先を急ぎ過ぎた反省もある。
もう一度機会があれば2066m標高点下から大事沢分岐へ行かずに、2066m標高点下を巻くようにし1932m標高点へ真っ直ぐに向かってみたほうが効率よいと考えています。 また、太郎山の北斜面へ昼寝に行くというのも実現したいものである。 (白根隠山の雰囲気と似た場所で好きな所である。)
栃木の山283のトップ こちら>>
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