2012年-report-87.

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【 内務省直轄工事 鬼怒川改修工事関係標石 】


鬼怒川改修工事 几号標石 『 不 BMNO_.6 キヌ 内務省 』 茨城県常総市内守谷町 香取神社 * 1


河川管理は国民生活に直結し経済活動に不可欠であり、ひとたび河川が氾濫すれば多くの物がひとたまりも無く破壊され田畑も流失し回復には大きな時間や費用を費やします。 また多くの人命を失う事もあります。 有史以来地震や台風や大雨により、利根川、鬼怒川、小貝川などが氾濫を起しました。 明治以前の河川工事は限定的で完成を見ませんでした。

明治政府は明治19年7月19日勅令を発し内務省に土木監督署(関東地方は第一区)を設置し河川の直轄改修工事のを開始しました。 内務省は全国の河川の中で初めに利根川改修工事に着手した。 その後支流である渡良瀬川や鬼怒川なども利根川改修工事と歩調を合わせて進めました。 明治38年3月末日組織(官制)を第一區土木監督署から東京土木出張所に変えました。 現在の下館河川事務所へ面々と受け継がれ今日の鬼怒川の姿があります。

国の(内務省直轄)鬼怒川改修工事は大正15年12月に茨城県結城郡宗道村・栃木県河内郡本郷村に測量員詰所を開設しました。 その後茨城県真壁郡伊讃村伊佐山事務所を設置し改修工事が進められました。 明治16年ムルデル(蘭人)により鬼怒川の支流吉田川(用水)の調査測量が行われた記録がみられます。

鬼怒川改修工事の基準となる水準標石(BM)が当時のまま現在も多数確認されております。 水準(BM)標石が設置当時のままに多数残されているのは大変珍しく貴重なものです。 その標石には地図測量黎明期の几号(不)が刻字されている。 几号とBMが併記され几号が使用された最後の標石ではないだろうか。 また、鬼怒川改修工事iBM標石は250mm角の大形のものです。

宇都宮市(旧羽黒村・上河内村)宮山田町の羽黒山東麓・古道日光道に、「第一區土木監督署」「BM」「26/0」刻字・球分標石が見つかった。 この球分標石は鬼怒川では初見で唯一のものである。 利根川や渡良瀬川でも現存数が少ない貴重なもので、残したい測量標石史では資産である。

先人の治水に掛けた情熱の証である貴重な測量標石を守って治水事業の大切さを知ろう。
一面に舞い散った境内の桜と几号標石が、今でもこの目に焼きついている。





『 第一區土木監督署 BM 26/0 』 球分・里程標石 栃木県宇都宮市宮山田 羽黒山古道日光道

・ 木立の中に球分標石を見た、鬼怒川改修工事に着手した始まりだったのだろうか。 設置時期は? * 2


                                                          更新日 2012.10.20
番 号 分 類 内務省 標石刻字 流域場所 設置場所  備  考
内務省基標 不 BM NO. 4 キヌ 内務省 鬼怒川右岸 茨城県守谷市板戸井 清瀧香取神社 境内参道脇
内務省基標 不 BM NO. 5 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県常総市菅生町 民家 納屋前 2012.10.14
内務省基標 不 BM NO. 6 キヌ 内務省 鬼怒川右岸 茨城県常総市内守谷町 香取神社 社殿前広場中央
内務省基標 不 BM NO. 7 キヌ 内務省 鬼怒川右岸 茨城県常総市豊岡町 浜明神神社 広場
内務省基標 不 BM NO. 8 キヌ 内務省 菅生沼近傍 茨城県坂東市神田山 八坂神社 社殿西側大木付近
内務省基標 不 BM NO. 9 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県常総市水海道元町 愛宕神社 元町会館隣 2012.10.2
内務省基標 不 BM NO.10 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県常総市中妻町 浅間神社 社殿前芝生
内務省基標 不 BM NO.11 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県常総市三坂町 三坂神社 社殿裏、石碑傍
内務省基標 不 BM NO.12 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県常総市本石下 八幡神社 滑り台して 2012.10.12
10 内務省基標 不 BM NO.13 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市宗道 宗道神社 社殿西側
11 内務省基標 不 BM NO.14 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市長塚 五所神社 華表傍、埋没
12 内務省基標 不 BM NO.15 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市桐ヶ瀬 天満宮 社殿裏、銀杏木根元
13 内務省基標 不 BM NO.16 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市平方 稲荷神社 隣家の畑、欠損あり 2012.10.12
14 内務省基標 不 BM NO.17 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県筑西市関本上 権現神社 社殿西側
15 内務省基標 不 BM NO.18 キヌ 内務省 鬼怒川左岸 茨城県筑西市船玉 船玉神社 方形古墳東部
16 内務省基標 不 BM NO.19 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 茨城県筑西市小川 薬師堂 薬師堂記念碑傍
17 内務省基標 不 BM NO.20 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 茨城県筑西市下江連 連稲荷神社 社殿南土中埋没、標柱あり
18 内務省基標 不 BM NO.21 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県真岡市鷹巣新田 鷲ノ巣神社 紫陽花花壇の中
19 内務省基標 不 BM NO.22 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県真岡市砂ヶ原 天満宮 梅林、華表傍
20 内務省基標 不 BM NO.23 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県真岡市中 星宮神社 小屋裏にあり
21 内務省基標 不 BM NO.24 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県真岡市柳林 稲荷神社 社殿の東側
22 内務省基標 不 BM NO.25 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県真岡市石法寺 神明宮 社殿の道路側
23 内務省基標 不 BM NO.26 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県宇都宮市上桑島町 宇賀神社 上部棄損、「鬼怒」刻字のみ残る
24 内務省基標 不 BM NO.27 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県宇都宮市道場宿町 今宮神社 華表の傍
25 内務省基標 不 BM NO.28 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県宇都宮市板戸町 智賀都神社 広場中央
26 内務省基標 不 BM NO.29 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県さくら市富野岡 天満宮 薬師堂と華表の間 2012.9.29
27 内務省基標 不 BM NO.30 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県さくら市押上 水神社 華表右 * 2
28 内務省基標 不 BM NO.31 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県塩谷町風見 大杉神社 社殿横
29 内務省基標 不 BM NO.32 鬼怒川 内務省 鬼怒川左岸 栃木県塩谷町佐貫 佐貫観音 断崖岩前広場
30 内務省基標 不 BM NO.33 鬼怒川 内務省 鬼怒川右岸 栃木県上河内村宮山田 高尾神社 石仏群の裏斜面埋没 2012.9.29
31 内務省基標 不 BM NO.34 鬼怒川 内務省 鬼怒川右岸 栃木県上河内村西芦沼 八龍神社 埋没狛犬前 2012.10.20
32 内務省基標 不 BM NO.35 鬼怒川 内務省 鬼怒川右岸 栃木県上河内村白沢 白髭神社 華表傍 2012.9.29

・ 標石寸法(刻字面) 250×250×h180mm角柱、上面の面取り、球分径:50mm×h20mm、 地中基礎部 1000×1000×約800 (推定重量1.85t)
* NO.4 〜 NO.35まで標石を確認・記録済 NO.4〜18までは「キ ヌ」刻字、NO.19〜35は「鬼怒川」刻字である。
* NO.1 & NO.3は、当初から設置せずなのか不明である。しかし、NO.3は、『BMを神社で見た』との聞き込みあり継続調査中。






里程(距離)標 『 10/9 内務省 』 茨城県下妻市平方 * 3


番 号 分 類 里程標(距離標) 標石刻字 流域場所 設置場所  備  考
里程標(距離標) 0/0  内務省 鬼怒川右岸 茨城県守谷市大木 球分なし
里程標(距離標) 8/18  内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市長塚 球分なし
里程標(距離標) 10/9  内務省 鬼怒川左岸 茨城県下妻市平方 球分なし * 3
里程標(距離標) 11/9  内務省 鬼怒川左岸 茨城県筑西市関本分 球分なし
里程標・水準標 26/0 BM 第一區土木監督署 鬼怒川右岸 栃木県宇都宮市宮山田 球分あり * 2

* 0/0 里程標は利根川・鬼怒川合流部のスタートを示す。 8/18は8里18町の里程、10/9は10里9町の里程を表示する基準標石 ( 1里 = 36町 )
鬼怒川では、「内務省」以外に「第一區土木監督署」刻字標石もあり、大正以前の明治期に内務省直轄工事があった事が考えられます。






栃木縣基標 『 延島新田基標 栃木縣 』 栃木県小山市延島新田 山神社  * 4

・ 栃木県文書館の保存文書(附図)で、延島新田基標の存在を知る。



番 号 分 類 栃木・茨城縣基標 標石刻字 流域場所 設置場所  備  考
栃木縣基標 冨ノ岡基標 栃木縣 鬼怒川左岸 栃木県さくら市冨野岡 天満宮 球分あり
栃木縣基標 芦沼基標 栃木縣 鬼怒川右岸 栃木県宇都宮市芦沼 高尾神社 球分あり
栃木縣基標 東刑部基標 栃木縣 鬼怒川右岸 栃木県宇都宮市東刑部 高尾神社 球分あり
栃木縣基標 上籠谷基標 栃木縣 鬼怒川左岸 栃木県宇都宮市上籠谷 神明宮 球分あり
栃木縣基標 上文挟基標 栃木縣 鬼怒川右岸 栃木県宇都宮市上文挟 稲荷神社 球分あり
栃木縣基標 柳林基標 栃木縣 鬼怒川左岸 栃木県真岡市柳林 稲荷神社 球分あり
栃木縣基標 砂ヶ原基標 栃木縣 鬼怒川左岸 栃木県真岡市砂ヶ原 天満宮 球分あり
栃木縣基標 堀込基標 栃木縣 鬼怒川左岸 栃木県真岡市堀込 稲荷神社 球分あり
栃木縣基標 延島新田基標 栃木縣 鬼怒川右岸 栃木県小山市延島新田 山神社 大木の中、刻字確認出来ず * 4
茨城縣基標 BM NO.1 鬼怒川左岸 茨城県筑西市小川 富士浅間神社 球分あり * 5

栃木県基標は、鬼怒川への用水や支流の基準点として県が設置したものである。 川の右岸左岸とは、上流から見ての左右を言う。
延島新田基標標石は、栃木県文書館の当時の土木資料に基標の記載を見て現地調査により存在を確認したもの。 






『 BM NO.1 』 茨城県筑西市小川 富士浅間神社  * 5

・ この標石の刻字は面一杯に刻んである。 Mの一部が欠けているが、
大きなBMは珍しい。 また、球分は痕跡が残る程度で欠損していた。



番 号 分 類 その他の標石 刻字 流域場所 設置場所
量水標 量水基標 栃木縣 大嶋 大正四年 鬼怒川左岸 栃木県宇都宮市石井大嶋 稲荷神社 球分あり
量水標 量水基標 栃木縣 蒲須坂 大正四年 荒 川右岸 栃木県さくら市蒲須坂 三嶋神社 球分あり
水準標 BM13 農林省 鬼怒川左岸 栃木県塩谷町 星宮神社 球分あり (耕地整理?)
界 標 L(上面) 茨城縣 鬼怒川左岸 茨城県筑西市船玉 船玉神社 球分なし

・ 界標 「L 茨城縣」は、河川界標ではなく県と神社の敷地界を示すものと思われる。付近では一基のみ確認した。


【標石石質】 内務省基標 :黒花崗岩 / その他標石 :花崗岩


参考文献・情報

『内務省土木局 大正十一年度直轄工事年報 附録図面』 / 『内務省土木局 昭和六年度直轄工事年報附図』 /
『内務省土木局 昭和七年度直轄工事年報附図』
茨城県立図書館所蔵 / 『内務省 利根川改修工事附図』 国会図書館所蔵 /
『鬼怒川・小貝川管内図 その1・その2』H24.6 / 『点の記』 国土交通省関東地方整備局下館河川事務所

*標石を偶然に初見し最後の詰めは河川事務所のご協力にて、概ねの標石を確認しました。多くの方々のご協力に感謝いたします。*
2012.11.23〜25 開催の「標石・測量展」にて展示発表しました。

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