徳八號二等水準點 大笹尾(大笹牧場)   

大笹原(牧草地内)の「徳八號」二等水準点     

「徳八號」水準点 明治41年(1908) 陸地測量部設置 (2007.09.02山部撮影)         


【瀬尾(大笹尾)水準点・徳八號の意義】                                                    . 
「徳八号」は、今市瀬尾「徳一号」標石の次の標石(*1)である。当時の測量では、途中の「徳二號」から「徳七号」までは、木杭を使ったと思われる。 この「徳八号」の確認で、2007.08.11発見の引馬峠水準点は、単独設置でなく、水準路線として設置されたことが確認されたことになった。 点から線になった、その先へロマンは続いた。

大笹尾で水準路線は青柳方面への道と分かれ上栗山への旧道をたどる。現在も放牧地に道形がある、霧降高原道路の旧料金所跡先には現在も道は残っている。上栗山、川俣、平五郎山そして引馬峠を越えて檜枝岐へと歴史の道は続く。昭和中期まで茅葺職人や会津との交易の人々が大笹尾を越えて歩いた。大笹尾からは北の県境尾根の黒岩山や帝釈山も確認出来る。歩いてきた引馬峠方面に振り返ると背の荷を置いて汗を拭ったであろう。ここから雄大な日光連山や近くの月山と眺望は良い、大笹尾の湧き水で一息ついたであろう。今も昔もここは旅人のオアシスであった。

奥鬼怒川俣から萱峠を越え野門から南へ富士見峠を越える道がある。今市へは東進して日陰(青柳)から大笹峠(*2)を越えて小百、今市へ通じていた。もう一つは上栗山から大笹峠へ直接進み日陰からの道と合流する。秘境とされた栗山、川俣と平野部を結ぶ最も重要な交易路であった。主に木材木炭が駄馬により峠を越えて小百まで運ばれ、そこで荷継ぎされ今市方面に搬出された。今市から運ばれる生活物資も小百の問屋を通じて交換されたと言う。

昭和16年黒部開発の発電所建設に伴う黒部〜川治間の自動車道路の開通すると通行は少なくなった。大笹原での明治からの放牧は今も続き、今市からの道(現:栃木県道245号青柳今市線)が開通、大笹の放牧地も規模が拡大され大笹牧場レストハウスも営業、昭和51年9月に霧降高原有料道路(*3)が開通し今も大笹牧場は賑わいをみせている。昔ここに大笹峠があったことは現代の人達には知る人は少ない。


*1 [陸地測量部 三角及水準測量成果摘要 第十一巻 ] P183下野國 によると、[二等水準點ニシテ球分ナシ真高ハ標石上面ノ高サヲ示ス]とある。 資料は「三角点探訪」上西様からです。

*2 大笹峠:標高1037.2m大笹尾の旧管理小屋付近を言う、付近には水場もある。(大笹牧場第三駐車場付近)
*3 平成18年9月26日(火)より通行は無料開放となりました。(栃木県道路公社)

  
鮮明で前面「二等水準點」、裏面「徳八號」と刻字あり。 保護石が四方を囲む。


【水準点・徳8号の設置情報 (*1)
  地形図    「川治」 1/5万図  昭和  年  月  日発行 
  等級点名  等級 二等水準点   点名 徳八號
  設置年     明治41年(1908)
  目的      今市から福島県南郷村までの水準路線測量の成果保存のため標石設置
  設置場所   栃木県日光市瀬尾字大笹尾3405番地 大笹牧場内 7-2牧区南方

    1/5万図「川治」、発行された地形図(昭和53年修正 昭和55年4月30日発行)に
    よると、地形図上に水準点の表示がある。
    当時、調査を行い亡失または発見できなかったものと推測され現在は廃点扱い。

  *1:埼玉県の飯島氏の設置情報及び大笹牧場様提供 (1/1万図 那須測量 H10.3.20)による。


【「徳8号」の諸元】 (2007.09.02山部確認、立会い人:大笹牧場 沼尾場長様)
  標高   1,037.2m (地形図記載の数値) 、1037.084m (点の記の数値)
  寸法   125mm  × 125mm   長さ(深さ) 地表部より 320mm)
  刻字   前面 「二等水準點」  後面 「徳八號」  側面 記載なし (いづれも縦書き)
  形状   角柱  上面に球分がない  角が丸みの形状
  緯度経度 36°50′13.8″  139°37′13.2″ (GARMIN社製 GPSmap 60CSによる実測)
  石質   花崗岩

【現地のようす】
  正面には、刻字「二等水準點」 南方のを向いている。
  後面には、刻字「徳八號」がある。標石は牧草地にあり

  標石は、地表部から300mm露出している。 防護石が側面と後面の四方にある。
  標石に損傷などはない、苔が一部に着いていた。(状態:良好)

  
現地は予定していた緯度経度と500mもちがっていた。 緯度経度はGPSで位置を定める。

 
  
  放牧地の柵の中に標石・付近を旧道が通る             ご案内いただいた沼尾場長        .


【探索状況】
  2007.09.02の今市市瀬尾(現日光市)の天候は曇りであった。県道 245号線を今市瀬尾から栗山青柳へ向う。
  小百、小休戸(こやすど)を過ぎた所の沢に、山神橋(さんじんばし)がある。ここから旧道で山道となり鬱蒼
  とした杉木立の植林地の急傾斜の道を歩く。山神橋から標高差200mを上げると標高880m地点の沢源流部
  に達しこから北西方向の尾根の九十九道を歩くと再び県道 245号線に出る。この道が県道 号線が出来る前の
  旧道である。県道を横切って再び旧道へは現在は通行できない。県道の側壁は石積された壁になっている。
  見上げるとその上は雑木の薮が見える、その先は現在大笹牧場の放牧地となっている。旧道は放牧地の
  中を青柳と上栗山分岐へと続いて行く。県道を大笹牧場へ第三駐車場へ。

  あらかじめ用意していた緯度経度を使って位置特定したが、場所はトイレや動物小屋が立てられていた。
  見渡す限りの牧草地であり、到底標石を探し当てることは不可能と悟った。大笹牧場は霧降高原に隣接し
  名の通り霧の多い所で今日は濃霧の小雨模様である。

  わからない時は率直に現地に聞くが鉄則である。レストハウスを訪ね大笹牧場沼尾場長にお会いして事情を
  説明した所、レストハウスの昼時の最繁時に係わらず快く心当たりの所に案内してくれた。
  前述した山神橋からの旧道のルートを現地まで行って説明していただいた。一旦戻って放牧地の柵を越えて
  旧道(古道)があった所の祠へ案内してくれた。数年前に祠の周囲に柵を巡らしたとの話を聞きながら霧に霞む
  草地を歩く。柵の中に引馬峠で見た水準点標石「徳八號」を見つけました。ドンピシャリで現地に案内してくださった、
  沼尾場長さんには感謝感激であった。沼尾場長は、旧管理小屋(現トイレ付近)があった事や旧管理小屋から
  青柳道と上栗山・川俣道(馬老道・バロウ道)の場内の道筋などの説明をしてくださった。

  
         放牧地にて                           大笹牧場レストハウス       .


【ご注意】
  大笹牧場は、正式には栃木県酪農業協同組合(略称 栃酪) 大笹牧場です。沢山の放牧牛がのびのびと
  放牧地を闊歩して活き活きと健康に生活しています。勝手に放牧地に立ち入ると病気の心配もありますので、
  現地訪問の時は必ず事務所に相談してください。大笹牧場は楽しめます、家族でステーキなんて素敵です。


【関連ページ】
   「徳号水準点」路線のトップページは、こちら>>
   日本最高所水準点「徳24号」引馬峠のページは、こちら>>
   「徳17號」瀬戸合・萱峠のページは、こちら>>

   大笹牧場様のホームページは、こちら>>


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