宮 界標 温泉ヶ岳から於呂倶羅山 NO.116-4

旧宮内省設置、明治の測量の証し、奥日光に埋標された宮界標、御料局三角点を探索する。 今回は温泉ヶ岳から於呂倶羅山の尾根である。 このルートは日光修験の夏峯行の道筋であり、栃木の薮山でも話題の人気ルートでもある。 
【山行日】 2009年 9月 5日 (土)
「宮 界甲五五八」
【山 域】  白根山
【地 図】  1/2.5万図地理院(男体山)
       地形図(金精峠・温泉岳)
【天 候】  晴、時々雲が流れる
【所在地】 栃木県日光市
【同行者】 ノラさん、山部の2名

【関連ページ】
 温泉ヶ岳の古穴 こちら>>
   


温泉ヶ岳 2332.9m 山頂から手前(北)の幅広の尾根が県境


【宮 界甲五二八 下野國 上野國】
 界標は温泉ヶ岳から根名草山への県境尾根途中にある旧念仏避難小屋手前の2274m峰から東進する。 2274m峰付近の登山道は西側を巻くのでこの峰に立ち入る人は少ない。 2274m峰の少し手前に「界甲五二八」宮界標がある。 刻字は「宮」 「界甲五二八」 「下野國」 「上野國」が界標の側四面に彫られ、上面に「×」が彫られている。 保存状態も良い周囲はコメツガの樹林であるが、緑の苔が付き雰囲気も良い。 鹿道であろうか踏跡がはっきりしていて界標の横を通っている。

 前回の予備調査時、この界標を見ていた。 2274m峰ピークまでは踏跡は付いているがその先には道は無い。 このピークから続く東への所の薮が濃い。 「界甲五二八」の次、また周辺に界標は無かった。

      
「宮」「界甲五二八」「下野國」「上野國」の界標刻字


【竜池ノ宿の尾根】
2274m峰〜2207m峰間には幾つかの峰がある、今回は薮山歩きではないのでドンドン歩かない、猪が探し物をしているように笹を分け、落ち葉を蹴散らし倒木の下をのぞき込みながら歩く。 他人が見たらこのような山中で何をしているのか、いぶかしいだろう。 しかし、2274m峰の「528」からは界標は見つからない。

 途中のピークでの小休止ではどっしりと雄大な温泉ヶ岳が望まれる。 背を改せば新調なった念仏避難小屋背後の枯れ木のピーク2326m峰を見る。 再び、南を見ると戦場ヶ原を二つに分ける道が真っ直ぐにこのピークに向いている。 白根隠山を越えたガス雲が三岳を包み、太郎山へ向っている。 幸いこの周辺は明るい陽射しが射している。

 この尾根を竜池ノ宿の尾根と題したのは、2207m峰との鞍部に湿原がありその辺りに日光修験の宿があった所という。 尾根の何箇所かには鹿のヌタ場があった、踏跡は鹿道である。 竜池ノ宿のあったという湿原周辺に石仏や祠も無かった。 2274m峰〜2207m峰間は思っていたような濃い薮は無い、界標は簡単に見つかるはずであったが一個も探しだせなかった。 



金精トンネル − 温泉ヶ岳 − P2274m − P2207m − P2193m − P1971m − 金田峠手前 − 刈込湖 − 小峠 − 湯元



 

【竜池ノ宿から2207m峰前後】
 県境離れて尾根を東進は、幾つかのピークはあるが概ね下り疲れることは無い。 聞いていた2207m峰前の鞍部にあるという湿原は左側見落とさないように歩いた。 やや小広い鞍部には湿原があった、この辺が竜池ノ宿という所なんだなーと思い石仏や祠などないかと湿原を回ってみたがそれらしき物は無かった。 湿原の向う側にある小ピークにも何も無かった。 もちろん界標も探したが無い、県境の「界甲528」から一度も見ていない、なぜないのだろう、もしかしたら旧宮内省の境界はこの尾根ではなかったかと色々と空想を巡らした。

 鞍部から2207m峰ピークに上がる、この尾根は東西に長い尾根でそのまま東進すると刈込湖に真っ直ぐに下る。 笹もない樹林の尾根である、ここから地図を見ると90度曲がって北進しなければならない。 尾根は地図読み中級の難度である。 頂上尾根から尾根が分岐しているのではなく、70m下がった所から北への尾根があるからだ。 頂上から少し下ってみるも北への尾根は見えない、鹿道が何本かあるが方向は定かではない。 我々はGPSを持っているので目的の尾根方向は解かる、問題なく北尾根に乗った。 しかし、ここで油断があった勢いあまって正面のやや左ピークに登り始めてしまった。 ノラ氏からダメだしがあり、戻って2193m峰に向ったが今日は感が鈍いようである。


竜池ノ宿、湿原
 


2207m峰

【宮 界甲五五七・五五八・五六一 〜 2193m峰
 2193m峰には2004.04.03と2005.04.23の2回残雪期に歩いているので懐かしくも思える。 100mのひと登りで2193だ、 2193m峰尾根の小ピークを巻いた鹿道を歩いていたが、ノラ氏から尾根に出ようとの提案があり尾根に向った、先に尾根に上がったノラ氏から界標発見の声がした。 やはりこの尾根が界標尾根であったと安堵した。 界標の刻字を確認すると「界甲五五八」であった、県境の「界甲528」であったから途中に30基あったことになる。 ここで一服した、ノラ氏が手前のピークに標石を探しに行った、しばらくして゛なかった゛と戻ってきた。 私はパンとお茶での一服が終わったので今度は探しに出た、30m手前の小ピークで戻ろうと振り返ると枯れ木に隠されたように頭を出していた。 「界甲五五七」であった、本日の最初の界標は連番であった。 尾根を2193m峰ピークに向うが尾根は広くなりそれからは見つからない、ピークの4-50m手前で大岩があるのでその岩を見ようと横に移動したら岩の上方に界標「界甲五六一」があった。 


     
界甲五五七                    界甲五五八                     界甲五六一

2193m峰 〜 金田峠へ
 2193m峰標高点は上り詰めた所である、その先のピークがこの峰の中心でここが山頂のように思える。 周囲の木に赤ペンキやビニルテープがあり安堵の気持ちになる。 下草の笹は密であり標石探しはあきらめ模様で下山ルートを探す。 一旦ルートに乗るが、私のGPSが信号が捉えきれずにノー感になりそれに頼った事により迷走する。 ノラ氏からの二回目のイエローカードでまたまた急斜面を120m位横切って本来の尾根にたどり着く。 細尾根、激薮、急傾斜の三拍子揃った難関ルート、時折り現れるマークも消えぎえであり、足は地面に着かない枝渡り状態だ。 眼下に刈込湖や湯元の建屋が見えるが、湖面とは標高差はある。

 このルートは高薙山へ二回も往復しているがいずれも残雪期である、以前「群馬の重鎮氏」が無雪期に歩かれた記録を見たが今更ながらにこのルートの薮難易度を痛感した。 ノラ氏と一緒で気は楽である、一つ目の鞍部に着いた、あとは1971mを越えれば金田峠だ。
                栃木の薮山、高薙山のページ こちら>>
 


2193m峰

 

【宮 界甲五七三】
 1971mピーク手前の立ち木の傍に界標があった。 刻字確認に北面を掘り確認、「界甲五七三」、本日4基目であった。 2139m峰から初めて金田峠の尾根で確認した意義は大きい。 高薙山の帰り金田峠までに界標を見た記憶があるがそれが何処だったかは定かでない、また、今回そのイメージの所が無かった。

 


界甲五七三



界甲五七八

 

【宮 界甲五七八・五八〇】
 「界甲五七三」から150m程歩いた所で界標を笹の中で見る、「界甲五七八」、から直ぐに「界甲五八〇」があった。 この二つは稜線上であった。 奥日光で見る宮・界標の間隔は30m-40mで設置されているので、次の界標を探す手掛りとしている。 1つ飛ぶと間隔がよりアバウトになるので連続して確認したいのだか。 本日、6基の確認であり笹も深くなり探索調査を終了が迫ってきた。

 


界甲五八〇

【金田峠手前−刈込湖−小峠−湯元】
 あと100mも進めば尾根を下り金田峠へ着くが、時間を確認するとすでに2時30分を過ぎている。 この尾根(標高1810m)と刈込湖(標高1616m)で差は約200mまた急傾斜である。 日暮れの時間を考えると一刻も早く下る事を決断する。 金田峠手前のガレた沢筋を下る事とする、樹林の斜面を下りたかったが露岩が見られこの沢を下る事を選んだ。 沢源頭に下りるも手掛りは少なく、上下同時下降による落石を出さないよう慎重になる。 ノラ氏はスイスイと下る、私は遅れ何度か待ってもらった。 ガレ沢の途中に両側が垂直壁に挟まれている所があり、それを見上げながら沢筋に下った幸運を得た。 その下に小滝が有ったが、横に巻き問題はなかった。 少し下ると、金田峠からのガレ沢を合わせる。 この下から沢に水を見る、途中で水はまた伏流になる。 再び沢に水が流れると周囲の傾斜もゆるむ。

 湖の水面が樹間に見られ、平たな鹿道を歩くと程なく刈込湖岸に着いた。 ここまで尾根上から1時間を要した、事故もなくベストだった。 このルート、ガレ沢は絶対にノラ氏以外とは下りたくない、他人の心配をしている余裕は無いそれが本音である。 湖岸で時間記録にシャッターを切ったが、湖面の雨の波紋がなくなっていた。

 刈込湖入口の案内板の所で足が止った。 さて、沢筋を行くのではないのか、沢の対岸には木製の階段が作られていた。 それを登っては三岳林道出て行くようだ。 しかし、階段は私の疲れた左足は辛い、右足はそれをかばって疲労している。 何度かの休みでやっと林道に出ると下り坂かと思った。 現在は小峠から谷間を歩くルートは使われないようだ。 5年も前になると道筋も変わってしまうようだ。 三岳林道は以前に、三岳探検隊で冬季歩いたが林道から刈込湖へ下った事はなかったの、こんな歩き易い道が使えると思いもよらなかった。

 小峠手前の所に大岩が2個落ちていた、温泉ヶ岳側には大きな露出した岩があるがそれではなく、三岳側のかなり上から落ちている。 途中の木々が薙ぎ倒されている。 自然の凄さを見せ付けられた。 小峠から平行道を歩き湯元に明るいうちに到着した。



刈込湖 1617m

【ルート】
金精トンネル口( 6:20)−温泉岳山頂(8:00-30)「界甲528」 ・2274m峰(9:15)−竜池ノ宿跡(10:15)−・2207m峰(10:40)−「界甲557,558,561」−・2193m峰(12:30)−「界甲573」−・1971m峰(14:00)−「界甲578,580」−金田峠手前(14:40)−刈込湖(15:30)−小峠(16:10)−湯元(16:30)


奥日光宮界標
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