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2007.09.16. |
引馬峠の「二等水準點」 (日本最高所の水準点標石)
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明治41年(1908)「徳二四号」水準点 陸地測量部設置 (2007.08.11発見)
当時の水準路線測量で設置した「二等水準點」標石は、徳号路線の3基を確認(07.09.30現在)。
今回は引馬峠の標石を再訪した。 引続き同種の標石を確認し測量の歴史解明の一助としたい。
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【馬坂峠−台倉高山へのアクセス行】
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東の空が白赤く染り始めるのを見る、ヘッテンのスイッチを入れると峠に一筋の光が走る。日帰りザックには僅かな昼食とスナック菓子の軽量である。馬坂峠から見慣れた道を光の筋が指し示す、僅かで水の沢を越すと県境の樹林はひんやりとした空気だ、樹間を朝日が抜けてシダの葉を白く光らせていた。程なく鹿の休み場の道標に着いた。時間記録の為にカメラのシャッターを切った、フラッシュが光を放った足はもう先にステップしていた。足取りは軽い三段田代までの時間を見て歩行時間が早すぎると思いつつも先に進む。台倉高山が見える所まで来て一服した。道が整備されていない頃、この先の巻き道のチシマザサに足を取られて滑った思い出がある。しかし今は刈り払われ赤い桧枝岐村の杭が点々と台倉高山へと案内した。最後の尾根を登ると陽射し眩い頂上を踏む。 |
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上面に球分が無い、後面に「徳二四号」の刻字 発見時の標石は、このように苔に全面覆われていた。
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【台倉高山−古道−引馬峠】
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360度眺望が自慢の台倉高山は南会津と尾瀬の先に群馬の山並み、会津駒ヶ岳の尾根の先には越後の山並みが広がる。福島栃木県境の東側には見慣れた山々が幾重にも連なっている。日光連山の尾根に朝日差込み鬼怒川に筋を引いている。身近な尾根は引馬峠から平五郎山へ交易の道だ。台倉高山の頂上には道標があり引馬峠の名がある。さあ出発だ前回は適当に下って失敗したので今回は尾根を下った。別に難しいルートでもないのに前回はどうして南に下ったのだろう、薮もたいしたことも無く鞍部の湿原に到着する。焚き火跡からやや越ノ沢側へ回りこみここで一番大きな湿原の中を横切って越ノ沢へ流れ込む小沢を飛び越えて
1895mのピークを巻くように越える。
さあ次の1950m峰へ登る途中で 1900mに有ろう古道を探す、越ノ沢から高度を上げてくる道に出会う。シラビソの樹林と下草のカニコウモリやシダ類は昔から変わっていないのであろう。いい雰囲気の中の古道は標高1900mを維持しながら真っ直ぐに南下している。道は半間弱(約90cm)の幅広い道である。現在は獣が歩いているのだろうが、今にも荷を付けた馬が引かれて(*1)向ってくるような感じである。程なく引馬峠に到着、水場でボトルに水を汲み錆びたプレートの下を通って標石に到着する。
(*1)この峠を馬が越えたとの情報は、伊南村の山内氏からお聞きしました。馬の背に荷(柄杓などの木工品)を付けて栃木へ運んだと話されていました。 2007.09.16
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【標石の確認】
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標石番号 徳24
所在地 s縣南会津郡檜枝岐村字黒岩山
真高 1,895.6m(地形図記載の数値) 1,895.460m(大正六年五月 陸地測量部の数値)
寸法 150mm × 150mm 長さ(深さ)は不明 (地表部 約100〜200mm)
刻字 前面 「二等水準點」 後面 「徳二四号」 側面 記載なし (いづれも縦書き)
(二等の竹冠が草冠になっている、徳の行人偏がラとなっている。号は號ではない。)
形状 角柱 上面に球分体がない平らである。 上面角の面取りがある。
緯度/経度 36°55′29.8″/ 139°25′42.5″(GARMIN社製 GPSmap 60CS 実測)
材質 花崗岩
現況
標石に損傷などはない、全体を苔が覆っていた。(発見時は、切り株に苔が覆っている感じ)
正面の刻字「二等水準點」は、南東向きで、斜面下側を向いている。
標石は傾斜地にあり、後面は地表部から100mm出ている。防護石が両側と後面の三ヶ所ある。
後面の刻字は、「徳二四号」でした。(「徳一七號」のような號でなく号であった。) |
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【元来た道を戻る】
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一回目探索(2007.07.28-29)、二回目探索(2007.08.11-12)で、今度で三回目となる。引馬峠から桧枝岐へのルートに古道があるとの情報の確認と引馬峠への再訪である。峠での標石の確認が済み、広い道を弾むように歩く、途中から道と分かれて1895mのピークを越え湿原に薮の中を下降していると、カウベルの音が微かに聞こえたまた聞こえた、あのベル音はきっとあの人だと思った。私の発したヤッホーの声に応じた@宇都宮さんのヤッホーが返ってきた。湿原の手前で10分ほど立ち話をして別れた、こんな深山を今頃歩いているのは我々しかいないだろう。
別れてから台倉高山への斜面で一汗かいて頂上に立つ。まだ陽は高く馬坂峠の車にはPM2:10帰着した。
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1895mのピーク 鞍部の湿原
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標高1900mを真っ直ぐに道がある。 おなじみの引馬峠の錆びたプレート
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【コースタイム】 日帰り装備
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馬坂峠5:00 - 三段田代5:40 - 台倉高山6:30-45 - 鞍部7:25 - 引馬峠9:30-10:05
- 鞍部11:50-12:00 - 台倉高山 - 三段田代13:50 - 馬坂峠14:10 |
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【ご注意・この地域の山歩き】
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この地域は2007.08.30の告示により尾瀬国立公園の成立に伴い規制などは関係機関に問合せ下さい。
引馬峠への明確な道は現在は有りません、登山道も無く獣道、沢遡行、激薮など危険な地域です。どのルートも読図力や薮歩きの経験を要求する地域です。 携帯電話は全く使えないエリアです。
周到な計画や熟達者の同行がこの地域を歩く条件になると考えられます。 計画にはご注意が必要です。 |
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【関連ページ】
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「徳号」水準点のページは、こちら>> 「徳一七號」瀬戸合権現・萱峠水準点のページは、こちら>>
「徳八號」瀬尾大笹尾(大笹牧場)水準点のページは、こちら>>
* 7/28-29 引馬峠(県境尾根・台倉高山から)のページは、こちら>>
* 8/11 引馬峠(越ノ沢から、帰りは火打石沢から戻る)のページは、こちら>>
* 9/16 引馬峠(県境尾根・台倉高山ビストン)は、こちら>>
【報道・書籍関係】
* 8/17 読売新聞 栃木版 、 8/21 読売新聞 福島版 、 9/14 下野新聞
* 「岳人」 10月号 、「山と渓谷」 10月号 、「山の本」 秋号 こちら>>
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